セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.362『シニア層を取り込め』

エンタメ・スポーツ

2011-06-13

 最近のお気に入りのテレビ番組は,NHK総合で,毎週木曜日の夜8時から放映されている『仕事ハッケン伝』。有名タレントが,約一週間,企業の現場で一般社員と同じようにガチで働き,その過程から見えてくる企業の経営哲学や仕事の流儀について考える体験型ドキュメンタリー番組である。6月9日の第5回は,いま人気上昇中のお笑いコンビ「ピース」の又吉直樹が,コンビニ大手「ローソン」に入社,販売促進の企画作りに挑むというものだった。

 コンビニ業界は飽和状態と言われて久しい。コンビニ業界の命運はシニア層の顧客をいかにして呼び込むかにかかっているということで,又吉は“おばあちゃんの原宿”と呼ばれる巣鴨商店街に出かけ,ヒアリング調査を行なう。そこで商店主たちの口から異口同音に語った言葉は,「もてなし」「ふれあい」であった。お年寄りの多くは,嫁の悪口や孫の自慢などの話を聞いてもらいたいと思っている。そこで,ドラッグストアの薬剤師のようなスタッフを常駐させ,お年寄りの相手をする体制を敷いてはどうかと又吉は重役会議で提案する。

 又吉の提案は,重役陣から概ね高い評価を得たが,その企画がすぐに実行に移されるかどうかは別問題。コンビニに地域のコミュニティとしての機能を持たせるというのは,人材育成・商品開発から店舗設計に至るまで,従来のコンビニのスタイルを大きく変換させることを意味する。このことは,我々GS業界にも当てはまる問題だ。私の店でも,近年高齢者のドライバーが本当に増えた。つくづく高齢化社会なのだなと実感させられる。そうした高齢者の方から時々,「おみゃあさんのところは,やり方が簡単だでええ」とお褒めの言葉を頂戴することがある。今後増え続ける高齢者ドライバーの利便性を考えれば,給油操作は極力簡単なシステムにすべきだろう。計量機のノズルは軽量化され,数量表示も大きく見やすいものになっているが,精算機は相変わらず選択肢が多く,何度もタッチパネルを押さなければならないものが主流だ。高齢者に優しい,単純な仕組みのものを導入することが,一つの重要なポイントになろう。

 そのうえで,それら高齢者の客に気さくに近づき,声をかけ,気遣いを示すことのできるアテンダーがいるなら,また,クルマのことに限らず,その地域の様々な事情に精通したガイドがいるなら,その店は高齢者層から大きな支持を得ることができるかもしれない。ジイちゃんバアちゃんがいつまでもたむろできるスペースがあればなお良い。お茶やコーヒーはセルフで飲み放題ともなれば,言う事なしだ。しかし,そのような企画の前には,コンビニ同様,「回転・効率」という壁が立ちはだかる。来店するお客様を親しくもてなしたいのだが,それに費やす時間や労力は,たくさん売ってナンボの商売ではやはり大きな足かせとなるのだ。

 増え続ける高齢者層のニーズを捕らえない限り,コンビニもGSも,この先厳しい環境を生き抜くことはできないだろう。「街の“ほっ”とステーション」だとか,「ココロも満タンに」といったキャッチコピーだけで客を呼び込めるほど甘くはない。だが一方ではコスト競争力を維持しなければならないという命題がある。この二律背反ともいえる課題をどのようにクリアするか。ピース又吉に「想像してごらん」と言われても,いまのところ想像できない。

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