セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.364『法人客』

GS業界・セルフシステム

2011-06-27

 最近,元売各社はセルフスタンドにおける法人客の囲い込みに注力しており,法人専用のクレジットカード(コーポレートカード)の発券を系列店に督励している。これによって,請求書の発行や集金の手間などを省くことができるうえ,売掛金の焦げ付きというリスクも回避できるとあって,既存の掛売り客の切り替えはもちろんのこと,新規法人客獲得のために,近隣の法人へ訪問セールスすることも勧めている。しかし,考えてみれば,それら法人客は,GSの顧客というよりは,元売の顧客といえる訳だから,元売の社員がセールス活動すればいいのではないかとも思う。それこそが,まさに「セールスマン」の仕事である。

 しかし,セルフスタンドでのCCによる法人獲得はまだあまり大きな成果を挙げていない。法人客の側からしても,店頭価格で給油でき,支払条件も大体,月末締めの翌々月の10日と少し余裕ができるうえ,全国の元売系列店で利用できるというメリットがある。また,最近のCCはETCカードもおまけで付いてきたり,各種ロードサービスも付加されており,大層便利なものとなっている。元売の宣伝をするわけではないが,いいコトづくしの1枚だ。

 にもかかわらず,CCがイマイチ普及しない理由は,やはり対象となる客が“法人客”というよりはむしろ“掛売り客”であるからではないか。つまり,「ツケの利く常連客」なのだ。彼らは,一般客と同じように,セルフスタンドでそそくさと給油を済ませ,さっさと仕事に出かけるというのではなく,スタンドの店主とセールスルームでおしゃべりを楽しんだり,洗車してもらっているあいだスポーツ新聞を読みふけったりして“油を売る”ことを楽しみとしている。GSスタッフにかしずかれ,給油や窓拭き,送り出しなどをしてもらうことに小さな優越感を感じているのだ。

 一方,GS店主や従業員にとって,なじみ客は,マニュアルにあるような行儀の良い挨拶や応対をする必要がないうえ,油外商品を簡単に買ってもらえるありがたいお得意様だ。「お~い,山本さん,そろそろオイル交換せんとあかんでぇ~」「おお,やっといてくれ~」「ついで水抜き剤も入れとくよ~」「おお,ええよ~」ってな具合で,GSスタッフと客とのあいだで麗しい信頼関係が築かれている。そんな感じでやってきたGSを,セルフに改造することなどとてもできない,と考えているGS経営者は少なくない。法人客から“セルフになるならよそへ変わる”と言われ,セルフ化を断念したGS経営者も結構いるのではないか。セルフと法人客は相性が悪いのだ。

 ひとむかし前の法人客といえば,価格を値引きしろ,クルマを取りに来い,タダで車を洗えなど,わがまま勝手な要求をしても,売上げが落ちるのを恐れるGS側がこれを呑み,厚遇を受けてきたが,近年は,現金化・セルフ化の潮流の中で,とりわけ都市部では厄介者扱いされる有様である。「掛売りNO!」「配達NO!」「給油NO!」というわけで,どのGSにも受け入れてもらえず,難民状態となった法人客のその弱みにつけ込んで,“CCでセルフ給油するなら掛売りで売ってやろう”ということになったのだろう。

 しかし,日本の古き良き掛売り文化に浸ってきた法人客には,やはりセルフスタンドでクレジット決済で給油するというシステムは,まだまだ受け入れ難いもののようだ。ちなみに,若い時代に法人客獲得とそのお守りに苦労した私は,いまや,法人客が大キライな「現金セルフ至上主義者」である。

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