セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.366『自由化は是か非か』

政治・経済

2011-07-11

 先ごろ,「楽天」の三木谷浩史社長が経団連から脱会した。理由は,「経団連が電力業界を保護しようとする態度が許せないから」だという。具体的には,東京電力を筆頭とする大手電力会社が,送電網を一手に握り地域独占という環境にあぐらをかいていたものを,「発電会社」と「送電会社」に分離して自由化させようという政府の(というよりは,菅首相の)考えに対し,経団連が否定的な立場を取っているということへの抗議の意思行動なのだそうだ。

 発送電分離は,ほぼすべての先進国と,中国・インドなどで採用されている。例えば,英国では1990年に国有電力会社が,発電会社3社と送電会社 1社に分割民営化されたうえ,一般家庭に配電する小売市場も自由化された。その結果,電気代節約のために,電力会社を変えるのは日常茶飯事という環境になっているという。

 実は日本も,第二次世界大戦が始まるまでは,電力業界は完全な自由市場で,数百社の電力会社が乱立していた。しかし,戦時中の国家統制による一元管理を経て,1951年に全国を9地域に分け,電力9社がそれぞれ独占するという体制がスタートし,それが今日まで続いてきた。今回の震災と原発事故により東電には多額の賠償金の支払いが求められており,政府による支援が必須となっているが,菅首相はその条件として,発送電分離を東電に呑ませ,60年に渡って続いてきた電力業界の体制に一気に風穴を開けようとしているというわけだ。

 石油業界は,オイルショック以後「安定供給」という大義名分のもと,原油精製量からガソリンスタンド設置件数まで,細部にわたって旧通産省の管理をうけてきたが,自由化によって,時限立法であった特石法もその期限を延長する事なく廃止となり,これまで精製メーカーでしか販売することのできなかった石油製品を商社が輸入販売することが可能となった。その結果,精製量を制限する事により国内流通量を管理していた旧通産省もその力を失い,これまで高付加価値商品であったガソリンの価格競争がはじまり,今日に至っている。

 これまでに,様々な業界が自由化され,再編や改善を果たしてきた。業種によって「自由化」の内容は異なるが,要は規制緩和を行ない,新たなプレーヤーが参加しやすい環境を整えることによって,価格やサービスを競争させるということ。電力業界は,自由化の波が及ばない“最後の聖域”だったというわけだ。電力自由化がなされた暁には,「○□電力のスマートプランなら,月々の電気料金がこんなにおトク」とか,「○□エネルギーにご契約いただくと,いまなら,エコカー充電器を無料でプレゼント!」など,いろいろなサービスが開発されることになりそうだ。

 自由化すると,価格競争による過度のコストカットが行なわれ,「安心・安全・安定」が脅かされるというのが,これまで自由化に抵抗してきたほとんどすべての業界の常套句だが,むしろ,自由化しないでいることのほうが,改善や進歩を遅らせ,危機に際して脆弱であることを,今回の震災は明らかにしたのではないだろうか。もちろん,自由化すれば何でもうまく行くわけではない。むしろ,当該業界にとっては激痛が伴うこともあろう。事実,我々もそれを経験してきた。(いまもしているかも…) それでもやはり,競争原理が働かない統制された世界よりはマシだと思う。

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