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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.373『スティーブ・ジョブズ』

社会・国際

2011-08-29

 8月10日,アップルコンピュターの時価総額が,エクソン・モービルを抜いて世界一になったとのニュースが駆け巡ったのも束の間,アップルのカリスマ経営者,スティーブ・ジョブズが24日にCEOを退任したと発表,株価は7㌫急落した。2004年に膵臓がんと診断されて以来,手術・入退院を繰り返しながらも,iPod,iPhone,iPadなど,コンピュター市場に画期的な商品を次々と送り出してきた天才経営者の胸中や如何に。

 ジョブズにまつわるエピソードは枚挙に暇がないが,私のお気に入りのエピソードは,1985年に一度はアップルを追放されたジョブズが,1996年に復帰した直後,マイクロソフトのビル・ゲイツを訪ねた時のものだ。開口一番,ジョブズはゲイツにこう切り出した。

 「ビル,君と僕とでパソコンOSの100%を押さえていることになるね」─。ゲイツはあっけに取られた。確かにジョブズの言葉は嘘ではないが,これではあたかもウィンドウズとマックOSが五分五分の関係にあるかのように聞こえる。ところが,当時のシェアは,ウィンドウズが97%で,マックOSは3%に過ぎなかったのだ。(笑)

 結局,会談は終始ジョブズのペースで運び,ゲイツは,オフィス製品をマックの新しいOSに対応させてほしいとのジョブズの要求を飲ませられてしまう。傍から見れば,アップルはマイクロソフトに助けてもらった格好で,多くの人が「ジョブズはもう終わった…」と感じたことだろう。しかし,マイクロソフトと業務提携を結ぶことに成功したジョブズは,したたかにアップル再建に着手する。アップルの今日の驚くべき隆盛をだれが想像し得ただろうか。それにしても,圧倒的な力を持つ相手に「君と僕とで」と言い放つジョブズの豪胆さに驚かされる。

 1994年,日本のガソリンスタンドは6万ヶ所を超え,最盛期を迎えていた。当時,無印スタンドは5千ヶ所足らずで,シェアは8㌫程度,アップルほどではないが,当時のGS業界における無印スタンドの存在は取るに足りないものものだった。ところが,いまや最盛期の3分の1が消滅するという厳しい環境の中で,無印はPBへと名を変えて,件数にして2倍(1万ヶ所),占有率は4分の1にまで増殖した。いまなら,独立系GS経営者たちは,何のためらいもなく,系列GS経営者たちに向かって,「我々でGS業界の100㌫を押さえていることになりますね」と言えるだろう。

 PBスタンドの増殖を促した主要因の一つがセルフ化であることはまちがいない。セルフ方式が認可された1998年以降,毎年千ヶ所を超えるペースでGSは減少,その一方でセルフスタンドは着実に増え続け,現在GS総数の約20㌫を占めている。GSの斜陽化が加速しているいま,PBもセルフも,今後確実にその比率を高めてゆくことにちがいない。にもかかわらず,いまだ,PB化にもセルフ化にも踏み切れないまま,高い仕入れコストと人件費を払い続けているGS経営者には,ジョブズ氏の次のことばを捧げたい。

 『あなたの時間は限られている。だから他人の人生を生きたりして無駄に過ごしてはいけない。既存の理論にとらわれるな。それは他人の考えた結果で生きていることなのだから。他人の意見が雑音のようにあなたの内面の声をかき消したりすることのないようにしなさい』─。

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