セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.381『防犯体制』

社会・国際

2011-10-31

 今年の6月のコラムでも取り上げたが,牛丼チェーン店「すき家」を狙った強盗事件が頻発している。警察庁の調べによると,今年,全国の牛丼チェーンで発生した強盗事件71件のうち,実に9割にあたる63件が「すき家」で起きている。「すき家」が“スキだらけ”ではシャレにならないというわけで,警察庁は「すき家」を展開する外食最大手「ゼンショー」の担当者を呼び,防犯体制を強化するよう異例の指導を行なった。

 本来,被害者である「すき家」だが,夜間はアルバイトが一人で勤務するうえ,レジが入り口付近に1台しかないという運営方式が,「犯罪を誘発している」(警察庁関係者)と指摘されるに及んで,遂にゼンショーは来年3月末を目途に,全国1,700店すべてで複数勤務体制を敷くと発表した。ある経営アナリストによれば,この施策によってゼンショーは年間25億円の人件費負担増となり,昨年度の連結最終利益の約半分相当が吹っ飛んでしまうとのことだ。

 強化のために莫大なコストをかけるぐらいなら,強盗被害による損害を“想定内損失”として計上した方が安くつく,という冷徹な損得勘定が働いていたのだろか。一杯280円という圧倒的な安さを誇る「すき家」の牛丼だが,もし安全を犠牲にして提供されていたのだとすれば何とも切ない。

 一方,業界2位の「吉野家」は,同じくレジ精算ながらも,レジがカウンター内の複数箇所に置かれているうえに店員二人体制のため71件中 6件にとどまり,券売機による前払い方式を導入している業界3位の「松屋」は0件だった。ガソリンスタンドに例えれば,「吉野家」はフルサービス,「松屋」はテクナシステムに代表されるプリカ方式セルフサービスということになる。

 プリカと聞くと,GS業界では安売り量販のツールと見なされているが,本来は代金決済を簡素化するためのものである。このコラムで再三再四訴えているとおり,セルフシステムの要諦は,いかに少ない人員で安全にGSを運営するかということである。そのためには,釣銭を渡す手間をいかに省くかが肝要なのだ。

 牛丼店とは違って,GSでは一人あたりの金額に幅がある。280円分給油する原付バイクから2,800円分の乗用車の給油まで,さらには28,000円分のダンプカーの給油にも24時間安全に,かつ簡単に対応できる決済方式となれば,プリカ方式しかない。また,プリカ方式にするなら,売上金はすべて店内の券売機の中に回収されるため,「松屋」同様,高い防犯体制を敷くことができる。

 私の店にも,この11年間に2回,いずれも深夜に泥棒がやってきた。一度は単独で, 券売機の鍵穴を壊そうとして電動ドリルのようなものを持参してやってきた。二度目は二人組で,重さ約80㌔の券売機を丸ごと抱えてゆこうとした。無人だと思って押し入ったのだろうか。どちらも,となりの監視室にいたスタッフに「コラァーッ」とどやしつけられた途端に退散していった。後日,犯行の一部始終を録画したテープを警察に提出した。

 販管コストを抑えながら,いかに安全を確保して営業を行なうか─これは牛丼屋やGSに限らず,すべての店舗業に課せられた問題だ。しかし,人命を危険にさらしてまで安売りするような馬鹿げたことだけは断じてやってはいけない。

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