セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.382『TPP』

政治・経済

2011-11-07

 このところテレビでは,連日,長淵剛の歌のように「ティピィピー,ティピィピー」とうるさいことこのうえない。TPPとは,「環太平洋経済協定」(Trans-Pacific Partnership)の略称で,「平成の開国」などと報じられている。米国・豪州をはじめ,太平洋に面するアジアや南米の国々とのあいだでの貿易を自由化し,関税を原則撤廃するという取り決めのことで,農業団体が,海外の大規模農家によって生産された安い農産物によって日本の農業は壊滅すると猛反対すれば,自動車や家電など日本の基幹産業は,海外での競争力が格段に高まりGDPを押し上げるとしてTPP早期参加を切望している。果たして,日本はTPPに参加すべきか否か…とまあこんな感じで国論を二分する騒ぎになっている。

 我々GS業界は,すでに1996年の特石法廃止による自由化の波をかぶり,今日までに最盛期の3分の1のGSが淘汰されることとなった。そもそも,GS業界が扱っている商品は,ほぼ100㌫を輸入に頼っているもので,関税もなにもない。それが,“備蓄用件さえ満たしていれば自由に製品輸入ができるようになった”というだけのことで,元売からの事後調整は途絶え,ガソリンマージンは激減し,厳しいコスト競争を強いられることになったことを考えると,TPP参加によって生じ得る“外来種”との戦いは,あらゆる産業において,さらにすさまじい淘汰の嵐を巻き起こすのではないかと予測したりもする。

 だが一方で,それまで元売の言うがままとなって販売量を追いかけていれば良かったGS業界は,次第に自立経営の必然性に目覚め,いわゆるPBスタンドがGS総数の4分の1を占めるまでになった。仕入れ価格はガラス張り状態となり,現金さえあれば,だれでも(系列店でも)様々なチャネルから自由に仕入れることができるようになったのも,規制撤廃のお陰といえる。事実,TPP反対一色のように見える農業の中にも,すでに農協に頼らず独自で消費者に農産物を販売している農家があり,そうした農家はTPP参加によってさらにビジネスが拡大することを待望しているという。

 TPPに参加した場合,GS業界に直接どのような影響が及ぶのだろうか。例えば,安い賃金で働く外国人労働者の雇用が自由化されることで,GSスタッフの大半が,外国人で占められるようになるかもしれない。仮に,時給1,000円を払っていたバイト社員を,時給500円で雇えるとしたら,ローコスト経営に大きく貢献する。外資系元売などは,積極的に斡旋したりするかもしれない。

 また,外国の計量機やセルフ機器などのメーカーが,GS建設に参入してくる可能性もある。そうなった場合,日本のGS,とりわけセルフスタンド建設においては,消防法の神経質な規制を幾つもクリアしなければならず,これが新規参入の障壁となり得る。もしこれがTPPで定めるところの「非関税障壁」とみなされ,外国の建設会社や計量機メーカーが,「日本の消防法の規制を撤廃してくれ!」と要求し,日本の消防庁がこれに応じない場合は,世界銀行の中にある「国際投資紛争解決裁判所」というところに訴えることができる。そして,この裁判で日本政府が負けた場合は,賠償金を支払うか,制度を変えなければならない。

 ローコスト・セルフスタンドの建設・運営の障壁となっている現行消防法や,PBスタンドに課せられている不公平な負担などが,TPPという“黒船”によって緩和・撤廃されるのであれば,TPP参加も“有り”なのかもしれない。どっちにしても,世の中の流れに抗っても仕方がない。ケ・セラ・セラ。一介のGS経営者としては,いまのところは,とにかく(T),プリカ方式(P)で,PBセルフ(P)の道を進んでゆくしかない。

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