セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.383『裸の王様たち』

オピニオン

2011-11-14

 最近,「従業員がかわいそうだよな~」とつぶやいてしまったニュースが三つある。ひとつは大王製紙の使途不明貸付問題。創業者の孫にあたる元会長が,子会社7社から無担保,しかも電話一本で総額107億円もの金を借り,そのうちの60億円が未返済のままだという。それだけの金を一体に何に使ったのかと思ったら,何とカジノでの豪遊資金だったとのこと。一万円札をティッシュペーパーに見たてて計算すると(どんな計算じゃ!),「エリエール」 3,000箱を優に超えるカネをバクチにつぎ込んだことになる。

 この問題の影響で,大王製紙は今月14日がリミットとなっていた中間決算発表ができず東証の「監理銘柄」となり,来月14日になっても決算発表ができなければ上場廃止となるという。むかしから,「三代目が身上を潰す」と言われてきた。その理由は創業者の親の苦労を見て育った二代目と比べ,生まれたときから経済的に恵まれた環境にいる三代目はお金の有難味がわかっておらず,放蕩癖が付きやすいとの理由によるものだが,今回のケースはそのまんまという感じ。大王製紙が倒産することはないとしても,経営不振で従業員のボーナスが減らされたり,リストラされたりしたら,あまりにもかわいそうだ。

 二番目の出来事は,オリンパスの損失隠し事件。1990年代の財テク失敗による損失を穴埋めするために,企業買収を装って1000億円以上も粉飾していたという。その手口を,新聞やテレビが解説していたが,何度聞いてもようわからん。とにかく,ケタはずれの不正に歴代の経営幹部が関与していたことが明らかとなり,こちらも会社存続の危機に立たされている。オリンパスは医療用内視鏡では世界シェアの75㌫を占める独占企業で,値引きはほとんどしないという。そのしわ寄せは,結局,検査を受ける我々に高い検査料となって及んできたと考えると,怒りを覚えるのは従業員だけではない。

 最後は,読売ジャイアンツのコーチ人事を巡るオーナーとゼネラルマネジャー(GM)との内紛。ナベツネ“天皇”に反旗を翻した清武GMは,オーナーの人事介入を,大王製紙やオリンパスと同列の経営トップのコンプライアンス違反だと訴えていたが,全然次元の違う話だと思う。確かにナベツネは日本屈指の“嫌われキャラ”だが,彼の言葉に冷静に耳を傾けると,それほど的外れなことを言っているようにも思えない。そもそも, ライアル,ロメロ,アルバラデホ,フィールズと,ロクな外国人選手しか集められなかった清武GMは,メジャーであれば有無を言わさずクビだろう。いずれにせよ,こんなくだらないお家騒動を見せられる選手(従業員)やファン(顧客)がかわいそう。

 アンデルセンの『裸の王様』は,子どもの正直さと大人,とりわけ権力者の愚かさを揶揄した寓話とされているが,さにあらず。あのお話は,王様が裸だということはみんなわかっているが,それを言ったら自分のクビが飛ぶだけでなく,国家の威信も崩れてしまうため,あえて気づかないフリをしていたのに,子どもがホントのことを言っちゃったということ。つまり,“大人なら空気を読め”という教訓を与えているのである。

 従業員の汗と涙で蓄えた利益を,遊興費や財テクでどぶに捨てるような愚かなことは許されないが, 大企業でも零細企業でも,経営者の暴走や専横を押しとどめることはそうそうたやすい事ではない。仮に清武GMのように立ち上がっても,所詮“蟷螂の斧”となるのが関の山だ。ならばこのまま長いモノに巻かれていれば良しとするのが,日本人の美徳と称される「和」の正体なのではないか。以上,へそ曲がりのPBセルフスタンド経営者のつぶやきでした…。

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