セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.390『EM撤退?』

GS業界・セルフシステム

2012-01-09

 新年早々,「またかよ」と苦笑してしまったのが,『エクソンモービル日本撤退報道』。一昨年の10月にEMが九州地区の約400ヶ所のGSの営業権の売却を大手商社系の石油販売会社などに打診しているとの報道がなされて以来,幾度となく「EM撤退」がささやかれていたので,業界はほとんどイソップ童話の「狼少年」状態。今回は,EMが保有する東燃ゼネラルの発行済み株式の大半を売却するとのことで,ロイター通信によれば,東燃による買収価格は約4,000億円で,そのための資金借入れの大枠もすでに複数の銀行とのあいだで固まっているとのことである。

 しかし,例によってEMと東燃はロイターの取材に対し,「うわさや憶測に対してはコメントしないが,エクソンモービルが日本から撤退するような計画はない」と回答したとのことだ。また,小売統括部長名で代理店・特約店宛てに『本日の一部報道について』と題した手紙を配信し,日本から撤退する計画はないとの見解を強調している。しかし,その手紙には,『幣グループは,現在日本市場における事業環境の変化に対応するための戦略を策定中です。これに関し(中略) 未だ最終的な結論に至っていません』ともあるので,やはり今後も“いずれは撤退するのだろう”と勘繰られてしまうだろう。

 EMは世界戦略として,経営資源を「川下」の販売業務から「川上」の石油採掘事業に経営資源を集中させており,米国や豪州,東南アジアなどではすでにGS運営からの撤退を完了させている。今後,資源がなく,市場が先細って行く日本から,EMがいまだ撤退しない方がむしろ解せないと思うのは私だけだろうか。一方,『東燃ゼネラルは,引き続き,エクソンから石油の供給を受けるほか,国内で展開するガソリンスタンドで利用している「エッソ」「モービル」のブランドも維持する。東燃ゼネラルは,エクソンモービル色を薄め,経営の自由度を増すことになる』(1月4日付「朝日新聞」)

 「経営の自由度」がどんなことを示唆しているのかわからないが,仮に東燃が鄧小平のように“赤いネコ(エッソ)でも,青いネコ(モービル)でも,白いネコ(PB)でも,ネズミを獲ってくれる(たくさん買ってくれる)ネコがいいネコだ”とばかりに,業転ガソリンをジャブジャブ供給してくれれば,日本のGS業界はダイナミックな変化を遂げるのではないかと期待したりする。とにかく,毎年,偉いサンたちが賀詞交歓会で「今年は変化の年」とぶってきたものの,この業界は根本的には何も変わらない(変われない)まま,斜陽の時代へと突入してしまったわけだから,EMも勿体を付けていないでさっさと日本から撤退し,その後は,JXグループ以外はみんな独立系になってしまうぐらいの世界になってもいいんじゃないだろうか。

 現在,EM系列店としてブランドガソリンを販売している忠勇なる代理店・特約店の諸氏は,今回の報道にもまったく動じてはいないだろう。彼らは常に業界の先頭グループとして走ってきた。24時間営業,現金カード,クレジット化など,いまではどこでもやっていることの多くはEMグループが先駆けて始めたことだ。特石法の撤廃とセルフの解禁で,かつては「マークを掲げたゴンタ」と揶揄されたEMは,いまやまごうことなき業界の最強ブランドとなっている。仮にEM本体が撤退しようとも,そのDNAを受け継いでいるGSには,新たなパートナーがすぐに現れることだろう。問題は,そこまで鍛えられることもなく,やがて合理化・現金化と対峙しなければならない他系列のGSだ。“EMさん,お気の毒に”なんて笑っていると,来年のいまごろはやばいかもしれない。

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