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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.396『最大のファンサービスとは』

エンタメ・スポーツ

2012-02-20

 プロ野球のオープン戦が始まった。スポーツ・イコール・プロ野球の私にとって,待ち遠しかった球春の到来である。どのチームも,レギュラー選手を脅かす若い選手の成長が望まれるところだが,唯一,若返りに逆行して“高齢化”を推し進めようとしているチームがある。中日ドラゴンズだ。

 監督の高木守道と投手コーチの権藤博の年齢を合わせると143歳というのはさておき,4番打者に43歳の山崎武司,開幕投手に47歳の山本昌広を据えようとしているらしい。そのうえ,メジャー2年間でわずか8勝に終わった川上憲伸(37)を呼び戻すに及んで,ドラゴンズはマスターズリーグに移籍するのかと思ったほどだ。

 「勝つことが最大のファンサービス」と言い,ファンには素っ気ないとされた落合監督時代のイメージを払拭しようと,今年のドラゴンズのキャンプでは,選手がファンと一緒にランニングしたり,練習後に即席サイン会を開いたり,球団キャラクター「ドアラ」が沖縄に常駐して愛嬌を振りまいたりと,ファンのご機嫌取りに余念がない。OBの監督,選手を呼び戻したのもその一環なのだろう。3年連続リーグ優勝を目指すドラゴンズの今年のキャチフレーズは『ファンと共に』だそうだ。

 阿呆らしい。そんなサービスに力を入れている暇があったら練習しろよと言いたい。事実,若手選手からは球団のファンサービス部に「サインを断れない状況になって困る」との苦情が寄せられているとか。以前もこのコラムで書いたとおり,私は落合監督のいなくなった今年のドラゴンズは,優勝はおろかAクラス入りも難しいと思っている。したがって,セ・リーグの優勝はブッちぎりでジャイアンツが…。

 プロ野球々団に限らず,すべての企業は顧客重視が大原則だ。しかし,個々の顧客のニーズすべてを満たすことはできないのだから,その“最大公約数”を見きわめ,その達成のために全力を傾けるべきだ。野球チームであれば,それは勝つことであり,優勝することだ。ガソリンスタンドの場合は何か。それは,「エブリデー・ロープライス」の実践だ。

 もちろん,一所懸命接客することも大切なことだが,価格の許容範囲はせいぜい2~3円だろう。GSスタッフが「AKB48」でもない限り,10円も高いガソリンを買いに来てくれる人はいないだろう。景品サービスで集客しても,その時限りのこと。宴が済めば客はまた価格の安い店に流れてゆく。それどころか,「最近,サービス悪いわね。景品くれないじゃないの」と文句を言われる始末。虚しさだけが残る。

 東北大震災の時,関東圏では一時的にガソリンパニックが生じたが,企業市民の一員たらんとして店を開け寝食を忘れてガソリンを販売したGSスタッフの手を握って,「ありがとう。もうこれからはずっとおたくの店で給油するよ」と言ってくれたその同じ客が,「おい,お前の店高いぞ。よそに代わるからな」と言ってきたりする。“ファン”とはかくも残酷なものなのだ。

 優先順位を見誤り,さほど意味もない「ファンサービス」に時間や労力を費やしていると結局,その客たちから見放されることになる。元売から脅されようと,同業者から馬鹿にされようと,一部の客から文句を言われようとも,せっせと業転を仕入れ,無駄なコストを削り,セルフ方式で安く売り続けることが「最大のファンサービス」なのだ。

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