セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.398『預り金』

GS業界・セルフシステム

2012-03-05

 顧客から預かった2,000億円に上る年金資産のほとんどをパーにした投資顧問会社AIJ。石油業界では,コスモ石油や北海道・東京都・東海三県などの石商系列の基金が年金運用を委託していた。例えば,三重県下約120社のガソリンスタンド業者などで構成されている同県石油業厚生年金基金は,2006年に年金資産の20㌫程度にあたる約17億円を預託したが,『先月24日に消失問題が発覚し,金融庁の業務停止命令をうけたあとも,いまだAIJ側からは一切連絡がないという。同基金の担当者は「大きな額なので,基金への影響は間違いない。加入者からは,基金が加害者のように扱われている。言いたいことは沢山あるが,一番はカネを返してほしい」と話している』─3月3日付「朝日新聞」。

 記事の表現によれば,基金担当者は,「加入者から加害者のように扱われている」ことに納得できないようだが,その認識は甘いのではないか。事実,AIJの高すぎる利回りに不審を抱き,簿価評価やリスク分析を行なった結果,解約を決断し難を逃れた基金もあるという。年金基金側も,加入者から貴重なお金を預かっているという自覚と責任を持たなければならない。

 顧客からのお金を預かっているという点では,GSのプリペイドカード販売も同じことだ。「前払式証票の規制等に関する法律」,いわゆるプリペイドカード法によれば,3月末または9月末の未使用残高が1千万円を超えたときは,発行者は未使用残高の1/2以上を2ヶ月以内に供託する必要がある。残念ながら,我が「セルフスタンド日進東」に関して言えば,そんなに未使用残高が貯まったことはない。一度でいいから,「いや~参ったな~,供託金積むことになっちゃったよ…」とぼやいてみたいものだ。

 冗談はさておき,最近,愛知県では「プリカ価格」を掲出し,周辺競合店より1円でも安く売ろうとするGS(専らセルフ)が増えている。プリカを固定化のツールとして有効活用しようとの目論見だが,くれぐれも限度をわきまえてもらいたい。2008年の青森県・柿本石油の事例は,まだ記憶に新しいところだ。ガソリンや灯油のプリカを大幅値引きをエサに売りまくり,その金を使ってピーク時には1年間で7ヶ所のGSを開設させるという“錬金術”を駆使した挙句の倒産で,中には30万円もの損失を被った客もいたとか。そこまで行くと,売りつける方も売りつける方だが,買う方も買う方だと言いたくもなる。

 柿本石油のDNAは,いまだに一部の量販GSに受け継がれている。あるセルフGSでは,5円引きをうたって5万円プリカを販売している。プリカといっても,テレホンカードのような度数式PETカードではなく,オンバリュー方式の電子プリカで,顧客は随時課金できる。5円引きは魅力なのだが,そのプリカの残高が3万円を切ると,値引き幅が小さくなるという仕掛けになっている。また,別のGSは,リライト方式のプリカで,残金を全部使い切ろうとしても,百円分は次回課金・給油時に使える分として残ってしまう。つまり,次回来店まで百円を“人質”として取られてしまうというもの。

 このような,顧客から預かったお金を,あの手この手で返すまいとするやり方には断固反対だ。顧客のことを案じて言っているのではない。こうした輩がまた倒産したりすれば,ますますプリカに対する不信感が強まり,規制強化に繋がることになるからだ。事実,AIJ事件で,金融庁は自らの監督体制の甘さを棚上げして,260余りの投資運用会社の調査を行なうことになった。真面目に商売している業者にしてみたら,とんだとばっちりだ。いずれにせよ,プリカの売上金は“預り金”であるという当たり前のことを改めて念頭に置かねばならない。

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