セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.406『「書き入れ時」と書くのだ』

オピニオン

2012-05-07

 GS経営者のみなさん,ゴールデンウィーク(GW)の販売成績はいかがでしたか? 我が 「セルフスタンド日進東」は,大型連休の恩恵を受けにくい立地条件に置かれているため,元々大した成績は期待できないのだが,今年はそれに輪を掛けてしょぼい成績であった。それもそのはず,期間中,周辺の系列セルフGSが,軒並み130円台で販売しているのだから,生半可な価格表示では太刀打ちできない。

 どう対応しようか迷ったが,業転ガソリンの仕入れ価格は,前週からほぼ横ばいの127~128円で推移しており,130円台に突入すると,1㍑あたりの儲けは5円にも満たない。黙っていても,そこそこの来店客でにぎわうこの時期に,何が悲しくてわざわざ赤字すれすれの価格で売らなくちゃならないんだと思い,140円台で踏みとどまった結果,売り負けたのだろうと冷静に分析している。

 GWは,一般消費者を顧客とする我々小売業者にとっては,「書き入れ時」とされている。「書き入れ時」とは,「商売の売れ行きが良い時には,帳簿に書き入れる数字が多かったり,額面が大きかったりするため,そう呼ばれている。ところが,中には「客を掻き集める」という意味の連想から,「掻き入れ時」と誤って理解している人もいるようだ。少なくとも,日進市内のGS経営者はそのように勘違いしているに違いない。もう一度,辞書を引いて正しい知識を身に付けてもらいたいものだ。

 もちろん,それなりの成算があってのことならば,安売りするのもよかろう。ガソリンは赤字で売っても,その価格に釣られて集まってきた客を文字通り“掻き集めて”油外収益でがっぽり稼げたのなら結構なことだ。ただし,ここで言う「収益」というのは,ただ売り値から仕入れ値を差し引いたものの事ではない。販売に伴なう人件費や光熱費などもそこから差し引く必要がある。そうすると,帳簿に書き込まれた数字が,あとになって,ゴールデンに輝くどころか,おびただしい血糊のようになってしまったということになりますまいか。

 結局,多くの系列GSは,大勢の来園者でにぎわう水族館で芸をさせられているアシカのようなものだ。普段よりもハードな仕事をさせられたご褒美として,幾らか多めにエサをもらえるかもしれないが,本当にホクホクして帳簿に数字を“書き込んでいる”のは,水族館の経営者,つまり元売だ。それでも,アシカは年中飼育係の世話を受け,それなりに可愛がってもらえるから良いが,系列GSは,無理がたたって病気になっても何の手当てもしてもらえない。ボロボロになった体で大海原に解き放たれても,もはや手遅れなのだ。

 恐らく,GW中の採算度外視の販売競争で疲弊した日進市をはじめとする愛知県内の系列GSは,いまごろ石商支部に集まって,恒例の「市況是正」値上げを画策していることだろう。しかし,こうして2週間ぶりのコラムを書いている私のもとには,先ほどから,126円台は普通で,125円台の仕入れ価格も見積りとして送られてきている。この分だとおそらく独立系GSは,連休明けから反転攻勢に移り,系列GSは連休中に消耗した体力を取り戻すことができないままそれに付き合わされることになろう。「書き入れ時」にまともな数字を“書き入れ”ずに,闇雲に“掻き込む”と,後々まで苦しむことになるということを,いい加減に学習すべきだ。元売や石商が主催して,「正しい日本語講座」でもやってもらったらいいかもしれない。

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