セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.419『電子マネー』

GS業界・セルフシステム

2012-08-06

 あるセルフスタンドの経営者が,現在の元売仕様のシステムはコストがかかり過ぎるため,テクナシステムに切り替えたいと相談に来られた。現在のシステムだと,電子プリカ一回の処理に20円近いコストがかかるのだという。「仕入れ価格が業転より6~8円も高いうえに,クレジットやプリカの処理費用を給油のたびに取られていて,とてもじゃないがやってゆけません」とのことだった。

 「しかし,いまのシステムのリース残があるんじゃないですか」と私が尋ねると,リースではなくレンタルなのだという。セルフに改造しても,5年と持たずに閉鎖する店も少なくないため,レンタル制度を導入しているのだそうだ。「だから,“来月いっぱいでお返しします”と申し出ればいいわけです。ただし,そんな申し出をすれば,すぐ元売が飛んできて“何を考えているんだ”と問い質されるでしょうけどね」─。

 GSにおけるPOSシステムは,元売が系列店を縛り付けておくための道具と言える。元売各社は,自社POSの機能や利便を高めることによって,我々の系列下にいるなら少々割高な仕入れコストを補ってなお余りあるメリットが享受できると特約店会などで喧伝している。最近の流行は電子マネーの相互乗り入れで,JXでは「Tカード」が,シェルでは「ポンタ」が,エクソンモービルでは「ナナコ」が使える。例えば,「TUTAYA」や「ファミリーマート」で買い物をしてためたポイントを「エネオス」で支払う時に使うといった具合だ。

 こうしたカードシステムを活用することによって集客や固定化が図られというのが謳い文句なのだが,ネット上ではこんな裏ワザも公開されている。「エネオス」で給油する前に「Tカード」を提示してポイントを貯め,支払いは全日空のクレジットカード「ANAカード」を使う。そうすると,ANAカードのポイントが100円毎に1マイル,ANAマイレージが100円毎に1マイル,Tポイントが200円毎に1ポイント(0.5マイル)付与され,ポイント三重獲りができるという。

 電子マネーとクレジットカードの併用によってポイントを稼ぐこうした裏ワザは,ほかに幾つもあるらしい。そのためか,「ポンタ」と「ナナコ」については,それぞれ現金給油時のポイント付与のみに限定されている。じゃあ,いままで店頭で懸命に獲得してきたクレジット会員はどうなるんだ,ということになるだろうから,いずれそれぞれのポイントを貯めることのできるクレジットカードが出てくることだろう。新たな開発費をつぎ込んで…。

 そんなことにカネをつぎ込むぐらいなら,もっと系列店の経営が楽になるような施策を講じれば良いのにと思うのだが,前述のとおり,これらのシステムは,系列店が離脱できないようにするためのものであり,もし系列から離脱した場合でも,すぐさま顧客にダイレクトメールを送り,引き続き近隣の系列店でポイントが使えることを案内して,客を引きはがしてしまうこともできる。さらに言えば,電子マネーの主要利用先はコンビニであり,特に「ナナコ」は「セブン・アンド・アイ」の開発したシステムである。将来,コンビニにGSを譲渡したり,運営委託を行なう時に備えての布石を打っているとは穿ち過ぎか。

 “集客効果バツグン”とか“固定化のキメ手”などと,さも系列店の販促支援であるかのように装っているが,実のところは元売の政策をスムーズに行なうためのツールであって,系列店には一文にも,いや,1ポイントにもならない。

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