セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.422『パーで,バカ!』

GS業界・セルフシステム

2012-08-27

 中央石油販売事業組合(COC)の副理事長にしてGS業界屈指の論客,清水石油社長・清水正行氏の,「パーで,バカでもやれるからPB」という言葉を聞いてニンマリしてしまった。自身もPB経営者である清水氏のこの自虐的とも言える表現を私なりに解釈すれば,昨今,急速に増えているPBスタンドだが,元売から仕入れるよりも安く仕入れることができるので,その分そっくり儲かるだろうなどという甘い考えでPB化した者や,相変らず数量を伸ばすために安売りの永久運動を続けているPBスタンド経営者への戒めの言葉ではないかと思う。

 実際,エクソン・モービルの毎週の代理店向け卸価格を見ると“よくこんな馬鹿高い仕入れ値なのに,あんな価格で売れるなぁ”と心底感嘆してしまう。きっと,もの凄い油外収益力があるか,手厚いインセンティブ制度があるのだろうとひがんでしまう。一方,“どこそこのPB店は月間販売量が1,000㌔を越えているらしい”とのウワサを聞き,ガソリン価格比較サイト「gogo.gs」で調べると,実売価格では恐らく2円程度のマージンしか稼げていない。清水氏に言わせると,こういう業者は「仕入先と銀行のために現金を取り次いでいるだけのブローカーに過ぎない」のだそうだ。

 しかし,本当に「パーで,バカでもやれる」のは,元売直営GSではないかとも思う。2ケタ減販の右肩下がり時代となったこの期に及んでもなお,親会社の言われるままにメール会員やクーポン券,プリカなどによる安売りを続ける彼らは,「採算」ということを考えていない,いや,考えてはいけないのであろう。最近,フリート大手「一光」もエネオスの100㌫子会社に呑みこまれたが,今後も元売は,直轄GS網を目一杯広げながら「パーで,バカ」な量販政策を推し進めるのだろう。そんな元売の変貌を目の当たりにしてもなお,元売との共存共栄によって未来が拓けると考えている系列店主たちがいるとすれば,その人たちもやはり「パーで,バカ」と言えまいか。

 しかし,GS経営者は別の意味において「パーで,バカ」にならなければいけない時もある。長年の元売との契約関係を捨てPBスタンドに替わるためには,それこそ「パーで,バカ」,すなわち,元売や組合の人々の常識からは離れた思考・発想をしなければならない。そのうえに,セルフ化までもやろうとすれば,「PB-S」,つまり「パーで,バカ」なうえに「精神異常者」呼ばわりされかねない。逆に言えば,そうした人々からの誹謗中傷を浴びせられることを恐れない勇気が必要なのだ。なぜなら,「石油業界の常識は世間の非常識」なのだから。ただし,前述のとおり,PBになりさえすればバラ色の人生が開けるわけではない。その先は,少しでも安いガソリンを自らの責任で仕入れ,日々在庫管理と資金繰りを考えながらの孤独な長距離走が始まるのである。

 このコラムを読んでいるGS経営者の中には,PBへの転進を考えつつも,いろいろな不安が湧いてきて躊躇しておられる方がいるかもしれない。あるいは,セルフ化,それも元売に帰属しないシステムを導入することへのリスクを心配し,逡巡しておられる方も少なくないだろう。そのような方々は,きっとこれまでに,PB化にせよ,セルフ化にせよ,時間と労力を費やして研究してこられたに違いない。だからこそ,あえて私が申し上げたいのは,「パーで,バカになれ」ということだ。現状を分析したうえで,面子やしがらみを捨て,時には情けも捨ててローコスト経営に徹してこそ真のPB(プライベート・ブランド)を確立できるのではないだろうか。

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