セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.423『ニホンカワウソ』

社会・国際

2012-09-03

 8月28日,環境省は,国の特別天然記念物だった「ニホンカワウソ」について,調査を続けても30年以上,生息が確認できる情報がないことから,すでに絶滅したと判断し,「絶滅種」に指定した。昭和まで生息していた哺乳類が「絶滅種」に指定されたのは初めてとのことで,関係者のあいだでは衝撃が広がっている。

 生物種の絶滅は自然状態でも起こっているが,人間活動によって引き起こされているそれは,比較にならないほどのスピードで進んでいる。1900年から1960年には1年に1種程度であったものが,1975年までには1年に1千種となり,現在では1年に4万種のペースにまで急上昇しているのだそうだ。いまから,100年後ぐらいには,トラやゴリラも絶滅してしまっているのだろう。いや,むしろ人間の方が─。

 産業版「レッドリスト」があるとすれば,日本のガソリンスタンドも「絶滅危惧種」の仲間入り確実の業種と言えよう。1994年度の6万421件をピークに減り続け,昨年度は3万7,743件と4割近くも減った。この18年間に,年1,260件のペースで減ったことになる。例えば,京都市内では,1994年に382店あったGSが173店と半分以下にまで減少し,東山区においては2008年にゼロ,つまり“絶滅”してしまった。『京都府石油商業組合は「(消防法改正による貯蔵タンクの改修の)費用対効果や後継者問題を考え,改修期限までに閉める店は増えるだろう。給油店がない地域で冬場の『灯油難民』も懸念される」と指摘している』─「京都新聞」 9月3日付。

 だが,京都市に限らず,GS減少の主たる要因は,この18年間,一向に改まることなく続いてきた過当競争に尽きる。「ニホンカワウソ」や「ニホンオオカミ」とは異なり,いわば“共食い”を続けてきた結果であり,自業自得とも言えよう。しかもこの間,採算性を度外視した大型セルフスタンドが,中小零細のGSを駆逐していった。1998年にわずか85店だったセルフは100倍以上の規模になったが,ここへ来てその“外来種”も,急速に悪化する環境に対応できず,恐竜のように滅び去ろうとしている。

 こうした厳しい環境の中で,我が「セルフスタンド日進東」はゴキブリのようにしぶとく生き延びてきた。この間,幾度となく巨大セルフ店に叩き潰されそうになったが,何とか岩の隙間や木の割れ目にもぐりこんでしのいできた。つまり,余分な人を雇わず,余計な事業に手を出さず,現金決済のみのセルフスタンドに特化してきたからこそ,何とかきょうまでやってこれたのだ。

 もちろん,この先も生き延びてゆける保証はない。しかし,「給油のみのセルフは生き残れない」などと散々中傷されてきたが,近年,絶滅するはずだったそれら“亜種”の生息が全国各地で確認されている。しかもそうしたセルフの多くは,PB化へと“進化”を遂げ,繁茂する勢いすらある。元売や御用コンサルが歯牙にもかけなかったビジネスモデルが,いまや無視できない存在となっており,その一方で,彼らが「生き残るため」に必須と見立てた数々のプログラムは,GSの減少を一度も食い止めることができないでいる。

 今回「絶滅」と判定されたニホンカワウソだって,もしかしたら人間が入りこめない秘境でひっそりと生き延びていて,いつの日か,隅田川あたりにひょっこりと姿を現すかもしれない。「あなたたち人間に世話を焼いてもらわなくても大丈夫。それより自分たちの心配をしたほうがいいよ」とでも言いたげに─。

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