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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.428『北海道日本ハムファイターズ』

エンタメ・スポーツ

2012-10-08

 今年のプロ野球パ・リーグは,北海道日本ハムファイターズが激しいペナント争いを制した。シーズン前,私はダルビッシュが抜けたファイターズは優勝はおろか,Aクラス入りも難しいだろうと予想していたので,この結果にはただただ脱帽である。しかも,監督・栗山英樹は,現役選手としては短命だったうえ,現場指導経験がまったくない“素人”だったが,下馬評をひっくり返す見事な手腕を発揮した。

一番感心したのは,悩める長距離打者・中田 翔を開幕からずっと4番に据えて使ったことだ。シーズン終盤になってようやく打ちはじめたとはいえ,トータルの打率は2割3分台。決してほめられた成績ではないが,先月28日の西武ライオンズとの直接対決で,2ホーマーを放ち全打点を叩き出してチームに勝利をもたらした時,栗山監督の忍耐が報われたと感じた。

 選手時代の実績や指導者としての経歴が必ずしも監督として良い成績に繋がるとは限らない。むしろ,栗山監督のように,スポーツコメンテーターとして野球以外のスポーツにも触れ,さらには,スポーツ以外の世界にも携わった経験の持ち主の方が,セオリーに捉われず,なおかつ謙虚な姿勢で選手やコーチを動かすことができたのかもしれない。

 ガソリンスタンドの経営においても,もはや,20世紀の成功体験は通用しない。例えば,あるGSをセルフに改造する場合,その運営に最もネックとなるのは,往々にして改造前までその店舗のマネジャーを務めていた人だったりする。これまでのやり方では生き残りが難しいからセルフ化しようというのに,これまでと同じやり方で運営しようとするものだから,成果が上がるわけがない。

 ある会社は,休眠中だったGSをセルフスタンドとしてリニューアルオープンする際,自社のフルサービスの店舗からスタッフを連れてくるのではなく地元で募集した。経験者も幾人か応募してきたが,結局,すべて未経験者を採用し,オープンまでに危険物監督資格を取得させ,運営を任せた。“GSとはこうあるべき”といった既成概念を持たず,とにかく清潔かつ安全に店舗を管理することに徹した結果,当初計画の何倍もの売上をあげるまでになった。もし,「クレジットカードを使えるようにしよう」とか,「洗車ぐらいはできるようにしよう」などと,いわゆる“セオリー”に捉われていたら,コストがかさみ失敗していただろう。

 経験がないということは,他の人から教えてもらおうという謙虚さに繋がる。事実,前年と同じ顔ぶれのコーチ陣を引き継いだ栗山監督は,“片腕”を持たず,年下のコーチにもしばしばアドバイスを求めたという。一方,ローコストセルフの論理を諄々と説いても,古き良き時代の経験と知識が歯垢か尿石のように(汚い表現ですみません)こびりついている経営者は,柔らかな物腰とは裏腹に,提案や助言というものにほとんど耳を傾けようとしない。自分を過大評価する余り判断を誤るということは,GSの経営者も,野球の監督もよく陥りやすい落とし穴だ。

 それにしても,北海道へ本拠地を移動して以来,トレイ・ヒルマン,梨田昌孝,そして今回の栗山監督の起用と,日本ハム球団の“人を見る目”の確かさには舌を巻く。こうなったら,(馬鹿げた制度ではあるが)クライマックスシリーズを“素人”采配で勝ち抜き,我がジャイアンツの待つ(はずの),日本シリーズに出場してもらいたいものだ。

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