和田 信治
GS業界・セルフシステム
2005-01-10
先日、初老の夫婦が来店し、まずカミさんが千円プリカを買ってから、ダンナに「アンタこれでガソリンを入れておいて」と五千円札を渡して灯油コーナーへ。ダンナは券売機に五千円を投入したあと、しばらく考えてから三千円プリカを買い、釣りの二千円を自分のポケットに入れる。もしかしてネコババ?そこへ何事か思い出して販売室に戻ってきたカミさんが一言。「そうそうアンタ、レシート忘れないでね」─。
オヤジは明らかに動揺している様子だったが、レシート発行ボタンを押すと給油に向かった。灯油の給油を終えた奥さんにレシートを渡すと、「あら、これ三千円じゃない」と問い質されたダンナ、二千円くすねたことを隠そうとして、とんでもない行動に出た。販売室にカミさんを連れて戻ってくると、スタッフのYに「おい、五千円のカードを買ったのに、三千円のレシートが出てきたぞ!」と凄い剣幕で食って掛かったのだ。
モニターカメラで事の一部始終を見ていたYは、落ち着いて「お客さん、三千円カードを買われたんじゃないですか?」と尋ねるが、息巻くオヤジは、「いや、オレはちゃんと五千円のカードを買った」と譲らない。
「じゃあお尋ねしますが、そのカードをいまお持ちですか?」
「いや、カードは全部使い切った…。」
「そんなはずはないですよ。ほら、お客さんの使った計量機のメーターを見てください。ちょうど三千円分の数量で止まっているじゃないですか。もし、五千円のプリカを入れたのでしたら、二千円分残っているカードが戻ってきているはずですよ。お客さんが買ったのは三千円のプリカだったんですよ。」
「何だとこの野郎、オレが嘘ついてるって言うのか!」
「お客さん、ポケットにおつりの二千円が入っていませんか?ちょっと確かめてみてくださいよ。」
「こ、これは、前から持っていた金だ!」
“そこまで言うかこのオヤジ”と半ば呆れ顔のYは、「そこまでおっしゃるなら言いますけど、私はあなたが三千円のプリカを買って、お釣りをポケットに入れるのをモニターで見ていたんですよ」─。
「そ、そんなはずはねぇ、確かにオレは…」─なおも反論しようとするダンナの声は、それまで事の成り行きを見守っていたカミさんの怒声にかき消された。「アンタ!もうやめてちょうだい!」。そして、Yの方に向き直ったカミさんは、今にも泣き出しそうな顔で「ごめんなさいね、お兄さん。ホントに…わたし、顔から火が出そうだわ」と、何度も頭を下げ、ダンナの腕をつかんで引きずるように車のほうへ連れて行った。「アンタ、わたしは情けないわよ、今どきこんなこと小学生だって…」と、カミさんの説教が続いていた─。
それにしても、である。いくらカミさんに叱られるのが怖かったからといって、店のせいにしようとするとは。それも、いい年こいたオヤジが、である。ガソリンスタンドの店員ごときなら、大声出せば何とかするだろうとでも思っていたのだろうか。そうだとしたら、とんだ見当違いだ。不景気で小遣いを減らされイライラが募っている馬鹿オヤジ共が、これからも各地のセルフスタンドに出没し、騒動を起こすことだろうが、恐れず、ひるまず、立ち向かってゆかねばならない。
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