セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.436『油断大敵』

GS業界・セルフシステム

2012-12-03

 灯油シーズンの到来と共に,我々GS業者が最も神経を尖らせるのは,コンタミ事故である。先日も愛知県のセルフGSで,灯油タンクにレギュラーを誤って荷降ろしする事故があった。すぐに気が付けば良かったのだが,すでに120人ほどの客に販売してしまっていたため,消防署のヘリや広報車が出動して地域一体に回収を呼びかける騒ぎとなった。決して他人事ではない。明日は我が身である。

 あるタンクローリーの運転手が言っていたのは,コンタミ事故の最大の要因は“思い込み”だという。東海地方だと,名古屋市やその近郊でのローリーの中身は,レギュラー16㌔,灯油4㌔というように,大抵はガソリンのほうが多い。ところが,岐阜県の山間地だとこれが逆転し,レギュラーは4㌔しかないが,灯油は12㌔積んで行くということがしばしばある。午前中に高山市に行き,夕方から名古屋市に行くという運行スケジュールの中で頭の切り替えができず,“数字の大きい方が”ガソリンまたは灯油という思い込みをしたままでいると,事故を起こす危険性があるというのだ。

 また,給油所側にもミスを防ぐためのアシストが必要だと,そのローリー運転手は言っていた。遠方注油口の蓋を開けたら,その内側にハッキリと見えるように油種が書かれていること,注油口のジョイント部にも油種名の札が取り付けられていることなど,環境整備がきちんとなされていることで,勘違いミスを大幅に減らせるという。『同じガソリンでも,元売によって名称が違うけれど,とにかく赤地に『レギュラー』とか,青地に『灯油』というように色も名称も統一しておいてくれるとありがたいですね。シャレた商品名なんかないほうがわかりやすいですよ』─。

 私は,全国のガソリンスタンドの注油口をすべて規格統一し,ガソリン・軽油・灯油のアタッチメントをそれぞれ形状の異なるものすれば良いと思う。ローリーもそれぞれの油種ごとにジョイントを付け替えて荷降ろしすれば,コンタミ事故は皆無になるだろう。同じ発想で,自動車の給油口と給油ノズルの形状も,ガソリン車は○,ディーゼル車は□というように統一すれば,誤給油は完全に防げる。石油元売やGS業界団体は,なぜ監督官庁やメーカー各社に働きかけてこれを実現できないのか。

 ローリーによるコンタミ防止だけでなく,セルフGSにおいては,客がポリ容器にガソリンを誤って給油しないよう見張っていなければならない。こちらは,ガソリンの純度がほぼ100㌫だから,間違って点火すればドカンだ。2009年1月には,名古屋市でアパート一室まるごと燃やす火事があったが,住人のフィリピン人女性が,近所のセルフGSで「コレ,ケロシンデスカ?」と確かめたものの,「ケロシン」が何かわからなかった無資格の従業員が給油許可を出したために起きた事故だった。仮に,ケロシンが何か分からなかったとしても,ポリ容器にガソリンを入れようとしている客に給油許可を出さなければ,事故は起きなかった。

 これは私の推測だが,恐らくそのGSは,その時だけたまたまポリ容器への給油を許可したのではなく,日ごろから見て見ぬ振りをしていたのだと思う。あるいは、ポリ容器にガソリンを給油してはいけないということすら従業員は知らなかった(つまり教育を受けていなかった)のかもしれない。そんなGSの経営者が,県の危険物安全協会の会長を務めていた人物だというオチまでついて,呆れてしまった。経験や憶測に頼ることなく,業歴や役職にあぐらをかくこともなく,毎日の仕事に緊張感を持って取り組んでゆきたい。

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