セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.441『法人客,来店す』

GS業界・セルフシステム

2013-01-14

 「セルフスタンド日進東」のご近所にあった出光系のガソリンスタンドが,先月末をもって営業を終了した。地元の自転車屋さんが経営していた小さなGSで, 施設はかなり老朽化していたうえ,いつ前を通っても閑散としていたので,閉店したことに特に驚きは感じなかった。“犬も歩けばセルフスタンドに当たる”日進市において,現金価格の看板を出すことなく,地元の中小・零細企業をおもな得意先として古式ゆかしい掛売り&配達による営業スタイルを貫いてきたのだが,遂に力尽きたといったところであろうか。

 ところで,そんなGSで永年給油していた義理堅い法人客は,今月からどこで給油しているのだろうと思っていたら,私の店にもぱらぱらと来ているらしい,。無論,私の店では掛売りも配達もしていないが,一人のお客は,「これを機会にもう現金払いにしようと思って」と言っていたそうだ。そうなのだ。多くの法人客は,セルフスタンドで現金給油したほうがはるかに安いことがわかっていながら, 惰性で掛売りを続けているのだ。毎朝,いきつけのGSで給油をしてもらっているあいだ,セールスルームで「中日スポーツ」を読みふけり,なじみのスタッフとの雑談を楽しんだあと仕事に出かける,という生活習慣が身に付いてしまっているのだ。GSで客が“油を売って”どうするんだ,と言いたい。「憩い」や「安らぎ」をタダで提供するほど,私の店は儲かっていないのだ。

 「おい,ホースはどこだ,ホースは付いてないのか!」と客が怒鳴ってきたときには,応対したスタッフは「?」となってしまったそうだ。一瞬,計量機にホースが付いていないのかと思ったそうだが,要は,給油したあと,汚いトラックを洗わせろというわけだ。もちろん,私の店にそんな施設があるはずがない。タダで水をジャブジャブ使わせるなんてことを許しているGSがまだこの世に存在しているとは夢にも思わなかった。私がこの業界に入ったころ,どこのGSも掛売りの法人客が主たる顧客で,タダで洗車をしていた。寒い日に,「洗車機はキズが付くから」という理由で手洗い洗車をさせられた体験が,いまの私を大の法人客嫌いにしたといってよい。「せっかく給油してやったのに,こんなにサービスが悪いならよそへ行くぞ!」とお客。どうぞどうぞ。

 これまでも,給油をしてくれだの,窓を拭いてくれだのという面倒くさい客が時々いたのだが,そういう客には,「この先に出光のGSがありますから,そちらへどうぞ」と案内していた。ところが,今回,そのGSが閉店してしまったものだから,甘やかされてわがままになった客が逆流出されているという状況だ。

 ひとむかし前の法人客といえば,価格を値引きしろ,クルマを取りに来い,タダで車を洗えなど,わがまま勝手な要求をしても,売上げが落ちるのを恐れるGS側がこれを呑み,厚遇を受けてきたが,近年は,現金化・セルフ化の潮流の中で,とりわけ都市部ではどのGSにも受け入れてもらえず,難民状態となっている。しかし,長いあいだ掛売りで給油してきた客も,現金でセルフ給油すれば,ガソリン代も時間もずいぶんと節約できるということを体感し,納得してもらえると信じている。

 「ここは開業したとき(2000年)から知っていたんだけれど,今回,はじめて給油したんだよ。セルフって案外簡単なんだね~。それに安いし…」というお客もいた。12年以上経ってようやく来てくれる人がいることを考えると,やはりGS経営は,しぶとく続けてゆかねばならないと改めて思う。

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