セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.445『アベノミクス』

政治・経済

2013-02-11

 最近,知人の女性が亡父の所有していた上場企業数社の株券を相続した。株のことなどさっぱり判らないから,とにかく全部現金にしてしまうと言っていたのだが,いざ売る段になると相続直前に比べてどの銘柄も値上がりしていた。彼女は“もう少し売るのを待っていたほうがいいかしら”と迷っているという。「欲を掻くとロクなことにならないぜ」と私。「そうよね~。でも,株にハマる人の気持ちも判らなくもないわ。これってやっぱり“アベノミクス”のおかげなのかなぁ~」─。

 日ごろ経済や景気の話なんか滅多にしない主婦までもが口にする「アベノミクス」というコトバ。安倍首相が推進しようとしている経済政策を指す,アベとエコノミクスを併せた造語なのだが,“あやのこうじ”みたく語呂がいいのか,今年上半期の流行語大賞の有力候補である。その中身は,日銀法の改正をちらつかせながら日銀に圧力をかけ,2㌫のインフレターゲットを設定させてじゃんじゃんお札を刷らせるというもの。これが,政権発足前から円安マインドを誘発し,輸出企業の業績を押し上げた結果,押しなべて株価を値上がりさせたというわけ。

 いわゆる「三本の矢」のうちの,「金融緩和」については上々の滑り出しと言えるが,これが実体の伴なったものではなく期待値に過ぎないことはみんなわかっている。今後は,残る二本の矢である「財政出動」と「成長戦略」がどの程度の成果を挙げるかだ。性懲りもなく無駄な公共事業にカネをつぎ込んだり,規制緩和が役所の抵抗でもたついたりしていると,7月の参院選のころまでに“アベバブル”がはじけるとの見方も出ている。

 一方,アベノミクスの副作用として,円安による輸入品の値上がり,とりわけ,石油製品の値上がりが続いている。このところずっと業転ガソリンの価格も上昇しており,今週はおおむね129円台となっている。これは前年同月に対して,10円近く高い。GS業界はすでにアベノミクス効果でインフレ局面に突入していると思いきや,永らくデフレ経済に慣れ親しんできた(?)ため,販売価格は一向に上がらない。

 例えば,愛知県日進市では,先月下旬から今月上旬にかけて,ニ度に渡り,元売各社による“協調介入”が行なわれ,レギュラー価格が150円台半ばまで値上がりしたが,その都度,翌日には2円,その翌日にはまた2円といった具合に値下がりしていく始末で,この三連休期間中には実売145~6円に戻ってしまった。それでも,業転ガソリンならまだ10円近いマージンがあるが,元売系列店はせいぜい5円,下手すりゃ3円ぐらいだろう。

 最悪のシナリオは,GS業界が“勝手デフレ競争”を続けているあいだに,アベノミクスの“ロケットスタート”が功を奏し,来年度中にGDP名目成長率が3㌫あたりにまで回復してしまい,2013年4月から消費税がアップしてしまうことだ。そうなれば,ただでさえ歯止めのかからない減販傾向に拍車がかかるのは目に見えている。量販一辺倒のいまの販売政策を一日も早く採算重視の態勢に転換しないと,我々はアベノミクス施政下における“負け組み”となってしまうだろう。

 果たして,アベノミクスなるものが,本当に日本経済を再生できるかどうかはわからないが,いまは大きなトレンドとなっていることだけは間違いない。そんな世の中の流れに無頓着なまま,相変わらずの価格競争を続けていると,さらなる地獄にはまる恐れもある。(1)現金販売へのシフト,(2)セルフ化による合理化,(3)仕入れコストの改善という“三本の矢”でこの難局を乗り切るべきだ。「ワダノミクス」と名付けようかな…。

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