セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.447『別れない理由』

GS業界・セルフシステム

2013-02-25

 独立系GSの経営者同士で話していると必ずと言っていいほど次のような会話になる。

 『それにしても,元売系列店の仕入れ値は高いよねぇ~』『ほんとにね。このあいだもウチより7円も高いガソリン買ってる奴がいたよ』『な,ななえん?!なんでそんなもの買ってるんだろう』『“なぜ?”って尋ねたら“安定供給”って言ってたよ』『まだそんなこと言ってるだ…オレ,10年以上PBやってるけど“不安定”になったことなんて一度もないよ』『仮に100㌔分7円高で買ったら70万円もコスト高になるんだぜ。三人分の給料出せるじゃん!』─。

 このコラムを読んでおられるGS経営者の中にも,相変らず割高なガソリンを仕入れている方がおられるかもしれない。私は,その方々に是非その理由を教えてもらいたい。“ウチのカミさんは,器量は悪いけれど料理がうまいし,気が利くし…”と女房自慢をするかの如く,“ウチの元売は,仕入れは高いけれどこんなにいいところがあるんだ”とのろけ話を聞かせてもらいたいのだ。

 信じられないほど高いガソリンを仕入れ続けるからには,それを補って余りある大きなメリットがあるに違いない─我々独立系GS経営者は,常にそのように推理し,系列店に対する不気味な恐れを抱いている。ところが,もし“安定供給”というような論理的な根拠のない理由でそうしているのであれば,我々はどれほど安堵することか。それは,隕石が落ちてくるかもしれないと考えて“系列”という地下壕に篭っているようなものであり,我々にとってまったく脅威とはならないからだ。

 まさかとは思うが,永年取り引きをしてきた元売への愛着や義理といった実体のないものにとらわれて高いガソリンを仕入れ続けているとすれば,これはもう商売の話じゃあない。「義理と人情を 秤にかけりゃ 義理が重たい 男の世界~♪」─映画『唐獅子牡丹』の世界だ。いや,笑ってる場合じゃあない。こうなると,経営者が意図的に自分の会社の利益を遺失させているとしか思えない。株主や社員に対する背信行為ともいえる。仁侠映画の中では,そんな悪い親分は高倉健さんに問答無用でこう言われてしまうだろう─「死んで貰います」。

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 こうしてコラムを書いているあいだにも,ある地方都市のGS経営者から相談の電話があり,親父の代から続いてきた仕入先との関係を解消してPBスタンドを始めようとしたら,向こう三年間は業転価格と同じぐらいの価格にさせてもらうのでPBはやめてほしいと嘆願されたのだがどうしたものか,とのことだった。別れ話を切り出された途端に急に下手に出るってことは,いままでやましい商売をしてきたことを認めているようなものではないか。それに,三年経ったあとはどうするつもりなのか。業転と「同じぐらい」って一体どういう基準なのか。私はとても信用できませんとお答えした。

 永遠の愛を誓った相手でも,生活費を稼ごうとしなかったり,暴力を振るったりするなら,すぐに離婚するかどうかはともかく,別居するなどの措置をとらざるを得ない。実際の夫婦生活が破綻するのは悲痛な経験だが,GS業界における離婚はまったく罪悪感にとらわれる必要はない。一夫多妻もGS業界では不道徳なことではない。ブランド料だの何だのとふんだくられ,直営販社という“愛人”に母屋を取られるような仕打ちを受けてもなお元売に添い遂げようとするのは,やはり,よほどの理由があるか,よほどの愚か者かのどちらかだと思う。

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