セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.450『TPPでどう変わる?』

政治・経済

2013-03-18

 国論を二分したTPP(環太平洋経済連携協定)への参加が事実上決定した。関税撤廃により貿易の自由化が一気に進み,日本製品の輸出が増加するとして歓迎する人がいる一方で,安い農産物が流入し日本の農業が壊滅するとか,医療保険の自由化で国保制度が危機にさらされるなどと危惧し反対している人もいる。実際のところ,どちらの主張もそれなりに説得力を持っており,TPPに参加した方が良いのかどうかわからない。しかしまあ,とりあえず参加しないことにはメリットを享受することができないわけだし,あとは日本政府を信用するしかない,というのが大方の人たちの思いではなかろうか。

 毎日新聞の行なった世論調査によると,TPP交渉参加を「支持する」と答えた人は63㌫にも上っているが,TPPそのものよりも,安倍政権への期待値といえるかもしれない。国民の支持を背景に永らく“鎖国状態”だった農政事業を改革する─これ,以前にも似たようなことがあったぞ…あ,そうだ,小泉政権が道路公団や郵政事業を民営化した時と同じだ。事実,8年ほど前に自民党の圧勝に終わった「郵政選挙」のあと,政府の規制改革推進会議は,次なる改革のターゲットとして農協の金融・共済・経済事業を郵政三事業に見立て,分割・解体することを提言している。それによると,農協の資材購入や農産物販売などの経済事業は高コスト体質であり,金融・共済事業の利益によって本来業務の赤字補填を行なっているとして,三事業を切り離した上で不採算部門を整理することを求めている。当然,この提言は当時の自民党農林族から猛反発を受けお蔵入りとなったが,今回のTPP参加によって,遂にその牙城が切り崩されることになりそうだ。

 規制推進会議が指摘した農協の高コスト体質事業の一つには,ガソリンスタンド事業も含まれている。現在,4千ヶ所余りの給油所を展開している農協だが,その半分以上が赤字だといわれている。TPP参加によって農協が脆弱化してゆくと,不採算GSの運営は困難になってくる。いまのうちに,SS事業を元売に丸ごと買い取ってもらった方がいいのではないか。所詮,「JA」が「JX」になるだけの話だ。

 TPP参加によってGS業界にどんな影響がもたらされるのかまだよくわからないが,物品だけでなくサービスも自由化されるということになれば,人手不足で悩むGS業界にとっては朗報となるかもしれない。また,仮に時給を800円払っていたスタッフの代わりに400円で働く外国人を雇うことができれば,ローコスト経営に寄与することになる。

 いま,米国では「シェール革命」の大旋風が吹き荒れている。電気1㌔㍗あたりのコストが石油で10円かかるのに対しシェールガスは6円程度で済むうえに,CO2排出量は石油のそれと比べて15㌫も少ないという。おかげで,オバマ政権が当初掲げていた「グリーンニューディール」はどこかへ行ってしまった。トウモロコシやサトウキビによって作られるバイオエタノールの必要性がなくなってしまったのである。

 では,大号令をかけて増産したトウモロコシやサトウキビをどうするか。TPPに参加する日本にこれを大量に買ってもらえば良い。日本が国内農家を保護しなければならないというのなら,それらの穀物を食用としてではなくバイオエタノール用として輸入・生産し,それを一定割合ガソリンに混合させることを義務付けるようにして消費すればよい。その際,日本の自動車燃料にかけられているガソリン税が「非関税障壁」になるとして米国から撤廃するよう求められればガソリン価格は一気に…まるで“風が吹いたら桶屋が儲かる”みたいな話ではあるが,いまのところはそんなことでも考えて成り行きを見守るしかない。

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