セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.451『二刀流』

エンタメ・スポーツ

2013-03-25

 プロ野球中継を観ていて,得点機に9番打者である投手に打席がまわってくると,きまって「○□はバッティングもいいですからね~」などと解説が入るが,日本では“野球が一番上手な子”が投手をするという伝統があるのだから,プロ野球でも投手を務めるほどの身体能力がある選手なら,バッティングが良いのは当たり前のことなのだ。

 例えば,1986年の日本シリーズは,広島カープと西武ライオンズの顔合わせとなったが,第1戦を引き分けたあとカープが3連勝し一気に王手をかけた。しかし,1-1のまま延長戦に突入した第5戦で,10回からリリーフ登板していた工藤公康が12回裏一死二塁の好機に打席に入り,津田恒美が投じた内角高めの速球をはじき返してサヨナラ勝ちした。これで息を吹き返したライオンズが4連勝して日本一に輝き,工藤はシリーズMVPになっている。

 とはいえ,高校野球ならまだしも,現代のプロ野球では,さすがに「エースで4番」は無理だろうと思っていたが,北海道日本ハムファイターズのルーキー,大谷翔平の「二刀流」を見ていると“ひょっとしたら”と思わせる。投げては157㌔の剛速球,打っては130㍍の特大弾─こんなワクワクさせる話題は久しくなかったことだ。

 GS業界における「二刀流」と言えば,やはり燃料油販売と油外商品販売を両立させることだろう。しかし,セルフ化してガソリンは以前の何倍も売れるようになったが,油外の方は思ったように行かず悩んでいるGSは少なくない。レンタカーや中古車販売などにも手を出し“広角打法”を試みるも,かえって赤字を増やすだけとなってしまったという事例もある。このところの黄砂で洗車機が忙しく動いているGSも, 動力代,リース・保守料,水道・洗剤代,汚泥処理費,そして人件費などを差し引いたら,あまり勝利(収益)に貢献していなかったりする。

 一方,法人客や常連客と永年かけて築いた信頼関係によって,車検や修理も含め安定した油外収益を確保しているGSは,そうした顧客を失うことを恐れてセルフ化・現金化には消極的になってしまうかもしれない。投手がデッドボールを恐れてバッターボックスの一番外側に立っているかのようだ。しかし,自らのバットで勝利を手繰り寄せなければならない時がいずれ来る。既存客を大切にしながらも,セルフ化による新規顧客の開拓に挑んでゆかなければ,ジリ貧になってゆく恐れがある。

 野球もGS経営も,「二刀流」として成功するのは容易ではない。仮に,大谷が投手としてはワンポイントリリーフ,打者としては代打要員程度の中途半端な「二刀流」ならやめてもらいたい。それはただの「二流」でしかない。先発のマウンドに立ち,同時にクリーンアップの一角を占めてこそ,真の「二刀流」と言える。それができないようなら,潔くどちらかに転向すべきだろう。

 「セルフスタンド日進東」について言えば,12年前の開業当初から今日まで,あらゆるコストをできる限り切り詰めて,燃料油販売一本でやってきた。それが最善策だったわけではない。人手を増やし,在庫を抱え,販促費を投じて油外商品を販売し利益をあげる自信がまったくなかっただけのことである。水抜き剤のような“毛生え薬”まがいの商品を客に売りつけることに疑問も感じていた。また,資金繰りが滞らないよう,プリカと現金による前払い決済のみとし,クレジットカードは扱っていない。「二刀流」どころか,守備にもつかない「指名打者」のようなものだ。それでも何とかこれまでやってこられたのは,身の程をわきまえ,大振りせず,「スモール・ベースボール」式経営を貫いてきたからだと思う。そんな自分だからこそ,大谷君には大きな夢をかなえてほしいと願っている。

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