セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.454『客という名の敵』

オピニオン

2013-04-15

 先日,私の店で起きた出来事。学生と思しき男性二人組が来店し,給油のあとごみが入っているであろう袋を持って店内をうろうろとしていた。監視カメラでその様子を見ていたスタッフのYが,その袋を計量機の脇に置いて車に戻ろうとしたところで表に出て行き,「ちょっと君たち,そんなところにゴミを捨てないでくれ!」と注意した。

 普通ならそこで“あ,スミマセン”とかなんとか言って持ち帰るのだが,何と二人組のひとりが,「これ,俺たちが捨てんじゃねぇよ!」とほざきおった。「そんなはずない,監視カメラでちゃんと見ていたんだから」とたしなめても非を認めようとしないので,Yは「ああそうか,そこまで言うならもういいよ。ただし,カメラ映像は一部始終録画されているから,もしあとで見直して君たちが捨てたということが明らかになったら,君たちを不法投棄で訴えるぞ。車のナンバーはバッチリ映っているんだからな」と言い渡して監視室に引っ込んだ。

 “…ったくいまの若い奴らは”とYが嘆いていると,店を出て行った二人組がしばらくすると戻って来て,「あのゴミは僕たちが捨てました,ゴメンナサイ」と謝りに来た。恐らく,本当に不法投棄で訴えられると思って怖くなり戻ってきたのだろう。はじめから素直に謝れば良いものを。結局,Yに説教されたあとゴミ袋を持って帰って行ったそうな。

 愛知県日進市は,幾つもの大学キャンパスがあり,そこに通う学生たちの住むアパート・マンションが点在する学園都市でもある。毎年4月には新入生が新たな客として,我が「セルフスタンド日進東」にも給油に来る。彼らの多くは初心者ドライバーでもある。セルフスタンドでの給油もどこか危なっかしかったりする。

 しかしそれ以前に,社会人としていまだ“無免許”なのではないかと思えるような若者たちが,時々来店する。今回紹介した連中もまた然り。安倍政権が推進する「教育再生実行会議」が道徳教育の教科化を提言していることについて,国が子どもの心に踏み込むべきでないとして危惧する声も多くあるようだが,こうした若者,いや,馬鹿者が増えるのを食い止めるためには,国が一定の関与をせざるを得ないのかもしれない。

 若者だけでなく,利己的で非常識な大人もしばしば目にしてきた。恐らく,日本中のほとんどすべてのGS関係者が,「客」という名の敵に,腹立たしい思いや,屈辱的な仕打ちを一度ならず受けてきたことだろう。私がセルフ方式でのGS経営を決意したのは,満タンにしてもわずか数百円しか利益が得られない相手に,心身を擦り減らして応対するのは馬鹿げていると考えたからだ。それよりも,「接客」というコストを削り,少しでも安くガソリンを販売することでお客に喜んでもらう方が理にかなっているというのが,ローコスト・セルフの基本理念だ。

 何だか,大げさな話になってしまったが,所詮,世のモラルの低下を止めることはできず,一部の客による迷惑被害は今後さらに増えて行くであろうから,そのリスクをできる限り軽減させるためにも,セルフ化を進めるべきだ。セルフスタンドの監視モニターを通して客を観察していると,神になった気分で人間の善悪というものを見極められる。あ,また大げさな話になってしまった。

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