セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.455『マーク揚げませんか?』

GS業界・セルフシステム

2013-04-22

 「和田さん,○□マークを揚げませんか?」─某元売のエージェントの方から誘いが来た。いや~,久々だな~。前に誘われたのは何年前のことだっけ…。ウチのような小さなスタンドによくぞ声をかけてきてくださった。一体どういう風の吹きまわし?との問いに対してエージェント氏曰く,「中途半端な規模のディーラーをマーク替えさせるには結構な額の“支度金”が必要なうえ,その後も何やかやと御守りが大変。それよりは一社1,2店舗ぐらいの小さな会社を集める方が費用対効果が大きいから」とのことだった。

 マーク替えにおける元売の査定規準は三つ。キャッシュ・スコア・ハードなのだそうだ。つまり,現金支払い能力がある程度あり,販売数量もそこそこあって,施設が著しく老朽化していなければ良いとのことだった。案外ハードルは低い「逆に,あんまり油外販売を一生懸命やっているところは敬遠される」のだとか。

 「結局,元売はガソリンを売ってもらうGSが一番ありがたい。某元売の100㌫販社のミーティングで,エリアマネージャーの一人が,「今年度後半は油外販売に注力し,収益性を高めてゆきたい」と決意表明したら,元売幹部から「馬鹿野郎,何 寝ぼけたこと言ってるんだ。利益なんか出なくても構わないから,ガソリンをじゃんじゃん売れ!」って叱責されたらしいですわ」とエージェント氏。

 元売各社の100㌫販社が,全国津々浦々で系列仕切りを下回る安値でガソリンを売りまくっているのは,彼らが愚かだからでも,能無しだからでもない。元売は精製マージンをしっかり儲けているので,1店舗あたりの販売量を上げることが最大の利益貢献となり,赤字はグロスで吸収できる。市況破壊によって,元々体力のない代理・特約店の淘汰は加速されるし,各都道府県の代表的なディーラーの多くも弱体化させ,100㌫販社の傘下に置き,自家薬籠にできる。こうして,元売はガソリンや軽油・灯油の販売を自分たちの意のままに操作するようになってゆく─。

 「信じようが信じまいが勝手ですけれど,これが元売の冷徹な論理ですわ。いままでは,ディーラーが「マーク替えるぞ」と脅せば,それなりの対応をしてきたけれど,いまはまったく相手にしない。“伝家の宝刀”を抜く勇気なんかないと見抜いているし,抜いたら抜いたで,「あ,そうですか。どうぞご自由に」って感じです。むしろ,彼らにとってこれからますます大切にしなきゃならん相手は,前金で買ってくれるうえに,油槽所まで商品を引き取りに来てくれるPBスタンドということになりますね」

 「じゃあ,マーク替えなんか下手にしないほうがいいじゃないですか。何で勧めてまわってるんですか」

 「いや~,GS経営者の中には系列マークが無いと不安だという方が結構いますからね。特に一店舗でやってらっしゃる方にね。まあ,和田さんが乗ってくるとは思ってなかったけれど,ダメ元と思って誘ってみただけ。それより和田さん,業転ガソリン買いませんか?いまなら結構安くできるんだけれど」─何というしたたかさ。これだから石油業界って面白い。面白いけどしんどい。

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