セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.461『安く見せかける』

政治・経済

2013-06-10

 『消費増税時の価格転嫁を円滑にする特別措置法が5日,参院本会議で成立した。2017年3月末までの時限立法。消費税転嫁に必要な場合は,税込み価格の表示を義務付けない』─6月6日付「日本経済新聞」。

 1989年に我が国において消費税が導入された際,GS業界ではほとんどの業者が外税表示で価格を表示した。“少しでも価格を安く見せかけよう”とする習性を持つGS業界では,当然とも言うべき選択だったが,2004年に総額表示,すなわち,エンドユーザーに対する価格表示は,例外なく内税表示とするよう義務付けられたため,今日に至っている。その際,小数点以下の表示をすることも禁止されたのだが,こちらの方はいまだに,“少しでも価格を安く見せかけよう”とする性癖を持つ一部のGSが「139.9円」などと表示しており,ひんしゅくを買っている。

 さて,「アベノミクス」なる経済政策の雲行きが早くも怪しくなってきているというのに,本当に来年の4月に消費税を8㌫に引き上げるのかというそもそもの疑問はあるものの,もし増税された場合,「税込み表示を義務付けない」ということになれば,“少しでも価格を安く見せかけよう”とする病気にかかっているGS業界は,また外税表示に戻ってしまうことだろう。内税表示を維持しつつ,ちゃっかり便乗値上を行なうなどというようなずる賢い行為は,正直者ばかりのGS業界では有り得ないのである。外税表示に戻すためのPOSプログラム変更料を負担することもいとわない。何と高潔な商道徳感覚であろう!

 結局,今回の特措法は,国家が国民に対して“少しでも価格を安く見せかけよう”としているように思えてならない。また,この特措法では,消費者に消費税を取らないという誤解を与える恐れのある「消費税還元セール」と銘打った広告や宣伝を禁止することも併せて定められた。

 1962年,本田技研が自動車ショーに出品した初の4輪車のボディカラーは赤。しかし,当時,一般の自動車に緊急車両である消防車の赤や救急車の白が使われることは法律で規制されていた。これに対し本田宗一郎は「赤はデザインの基本。それを法律で禁止するとは!世界の一流国で国家が色を独占している例など聞いたことがない!」と運輸省に噛み付き,苦労の末規制撤廃を成し遂げた。

 確かに,「消費税還元」という表現は「ウソ」である。何を幾らで売ろうと,その業者は消費税を徴収される。しかし,やはり何を幾らで売るかということについて国家が過度に口出しすることには違和感を禁じ得ず,前述の本田宗一郎のエピソードを思い出した次第だ。

 この規制の目的は,大手小売チェーンなどが,仕入先である中小零細企業に圧力を欠け,消費増税分を転嫁させないようにする“弱いものいじめ”を防ぐためだそうだから,GS業界に関してはまったく無用の心配である。GS業界は,仕入先である元売にこれっぽっちも圧力もかけられないのだから。むしろ,元売の方から“少しでも価格を安く見せかける”ための最新型の価格看板を斡旋されたり,販売量を落とさないために増税分を吸収するようさらなるコスト削減を強要されたりするだろう。

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