セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.463『DJポリス』

社会・国際

2013-06-24

 『日本代表のユニホームを着ている皆さんは12番目の選手です。チームワークをお願いします』─サッカー日本代表のW杯出場が決まった今月4日夜,東京・渋谷駅前の人混みでマイクを握る警察官が脚光を浴びた。人呼んで「DJポリス」。ユーモラスなマイクパフォーマンスで群集を沈静化させ「負傷者・逮捕者ゼロ」の立役者となった警視庁第9機動隊の千田隆介巡査(29)に対し,警視庁は警視総監賞を授与した。

 機動隊と聞けば「安保闘争」や「成田闘争」の時のように,ジュラルミン盾でデモ隊と激突を繰り返すこわもての実力部隊のイメージだったが,近年は専ら初詣や花火大会のような人混みでの安全確保の任務が増えているのだそうだ。そのため機動隊では,群衆相手に高圧的に指示・命令するのではなく,ソフトに協力を呼び掛ける“戦術”に転換,アナウンス技術のコンテストも開いており,千田巡査は昨年の優勝者だった。

 すでに「DJポリス」の話術は,したり顔したコンサルタントたちによって,接客や販売の現場において応用されようとしている。曰く“共感を呼び起こせ”“ユーモアのセンスを磨け”“状況と空気を読め”というのだが,千田巡査は機動隊員約3千人のうち数人しか持っていない「広報上級検定」にも合格している,まさに“アナウンスのプロ”。一朝一夕に真似できるものではない。ゆめゆめ,SS研究会やDWSコンテストなんかで“DJポリスの話術を分析してセールストークに活用しよう”なんて身の程知らずの企画をなさいませんよう…。

 そもそも,渋谷交差点で騒いでいた連中は,広義において「フーリガン」である。今回は,「DJポリス」のトークがウケて,力によらずに“制圧”できたが,次回もうまく行くかどうかはわからない。お笑い芸人はすべっても自分が恥をかくだけだが,機動隊員は失敗すれば,群集を暴徒化させる恐れすらある。そうした緊張感のなかでユーモアを交えてしゃべり続けるのは大変なことだろう。

 セルフスタンドでは,なるべく来店客をコントロールしないほうが良い。混雑時においても,大抵は客同士のあいだに暗黙のルールのようなものが生じ,導線や順序が形作られているようだ。時々,そうした“空気”の読めない客が流れを妨げるような場合に限って,お願い調で車両の移動を促すようにしている。

 それにしても,現在トルコやブラジルで起きているデモ隊と警察・軍隊との流血騒ぎをニュースで見ながらつくづく思うことは,日本で商売していてよかったということだ。ガソリンの値上がりのたびに,暴徒に襲われたのではたまったもんじゃあない。また,ある外国人の方は,日本ではセルフスタンドでタバコをくわえて給油する人がまったくいないことに驚いていた。やはり日本人は高いレベルの公衆道徳を持ち合わせているようだ。

 とはいえ,元売に高い仕入れ価格を何とかして欲しい,系列子会社の安売りをどうにかしてほしいと抗議に行ったら,「DJ支店長」の巧みな話術に丸め込まれてすごすごと帰ってきてしまった,なんてことでは情けないけどね。

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