セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.465『ブランドとプライド』

オピニオン

2013-07-08

 “そりゃあそうだわな”というのが率直な感想─。前回取り上げた,公取委員会が系列販売店に業転ガソリン購入を認めるよう石油元売りに求めるとの報道に対し,『JX日鉱日石エネルギーでガソリン販売などを担当する高橋章次取締役は,「仕入れを禁止しているわけではないが,商標を掲げた系列給油所では直接供給のガソリンでなければ販売を認められない」との見解を述べた。さらに高橋取締役は,「利用者は“エネオス”の商標を信頼して給油する。流通経路が異なる業転玉の販売は,利用者への裏切りとなる」と元売りの立場への理解を求めた』─6月28日付「日本経済新聞」。

 確かに「元売りの立場」になって考えれば至極当然のことだ。ただ,業転ガソリンを売ることが「利用者への裏切り」というほど酷い事とは思わない。「ルイ・ヴィトン」のバッグの贋物を売るわけでなし,業転玉もまた歴とした“メイド・イン・元売り”なのだから。むしろ,「仕入れを禁止しているわけではない」けれども,「販売は認められない」というのはどういうことなのだろうか。まるで,「貼り紙禁止」と書いた紙が貼ってある塀のような話で,ようわからん。

 そんな訳の分らないことを言ってないで,元売りは毅然たる態度で“ウチのマークがなくなったら大半のお客さんはもうあなたの店には来ませんよ。おたくの客だと思っているが,実はウチの客なんです! だから,それ相応のブランド料を払うのは当然だし,それを補って余りあるメリットがあるのです。嘘だと言うのなら,マークを返して業転ガソリンを仕入れてごらんなさい”と言うべきではないか─。

 そもそも“ブランド”とは古代ノルド語を語源としており,放牧されている家畜の所有権を明確にするために押された焼印のことを指す語なのだそうだ。その字義通りに解釈すれば,系列販売店は元売りの所有物なのであって,販売店主が元売りに向かって「製品を買ってやっているんだぞ」などと威張っているのは片腹痛い。では,“焼印”を押されていない我々独立系GS経営者はといえば,これはもう,夏の夜の蛍の如く,「あっちの油はた~か(高)いぞ,こっちの油はや~す(安)いぞ」と,節操なく飛び回っているだけで,「買ってやる」などという傲慢な気持ちはこれっぽっちもございません。

 一方,元売りはと言えば,工場よりも本社・販売の方が上と思いきや然にあらず。需要減が進む昨今にあっては,稼働率を減らさないためにもっと売ってくれないと困ると上から目線で言ってくる工場側に,本社・販売は焦燥感を募らせているのだとか。

 そのむかし,トヨタ自動車が「自工」と「自販」に分社されていた時代の事,両社の課長級社員の交流会のようなものがあったらしい。その席で,「自工」の社員が「自販」の社員に向かって,『お前らなんか穀潰しだ。俺たちの作った車は黙ってたって売れるんだ! 』と言い放てば,「自販」の社員は『お前らこそ,やれ開発だ何だと無駄遣いばっかりしやがって!「トヨタ」のエンブレムさえ貼ってありゃあ,どんなポンコツでも俺たちが売りまくってやらぁ』と言い返したそうな。製造する側も,販売する側も,それぞれが強烈なプライドを持って仕事をしていたことを物語る“ちょっとイイ話”だ。石油業界にも,そういう気概が欲しいものですな…。

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