セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.467『冤罪事件』

社会・国際

2013-07-22

 2007年公開の日本映画「それでもボクはやってない」。満員電車の中で痴漢されたと訴えられた主人公が無罪を訴えて裁判で戦う姿を通して,刑事裁判の実情を克明に描き出した人間ドラマである。すでに地上波テレビでも放映されたので,ご覧になった方も多いことだろう。“人が人を裁く”ことの危うさと冤罪被害者の心の叫びが観る者を戦慄させる。社会派スリラーと言ってもよいコワイ映画。監督は「Shall we ダンス?」の周防正行。

 先日も誤認逮捕事件が明らかとなった。大阪府警北堺署が1月に起きた窃盗事件の容疑者として42歳の男性会社員を4月24日に逮捕,勾留した。男性は一貫して「身に覚えがない」と主張。検察が冤罪を認め釈放されるまで,85日間も勾留されていた。なぜ彼は逮捕されたのか。そしてなぜ身の潔白が明らかになったのか。

 この事件は,1月13日の早朝,堺市内のセルフGSで,盗難されたクレジットカードを使って何者かが給油して逃げ去ったというものだったのだが,容疑者とされた男性会社員は,スタンドのPOSに記録されていた盗難カードによる給油履歴と“同じ時間”に給油している姿が監視カメラの録画記録にあったため逮捕されてしまったのだ。

 ところが,この男性はその時間に,現場GSから6㌔以上離れた高速道路の料金所を通過したことが明らかになった。確かなアリバイがあり,犯行は不可能であることが実証されたのである。では,なぜそのような誤認がおきたのか。実は,録画映像に表示されていた時刻が8分も進んでいたのである。つまり,実際より8分前の映像を,盗難が行なわれたのと“同じ時間”と間違えたのである。『大阪府警は,今月20日に,大村喜一・刑事総務課長が「誤認逮捕はほぼ間違いないだろう。恥ずかしい話だ」とずさんな捜査だったことを認め,事実関係の確認後,男性に謝罪する考えを明らかにした』─7月21日付「読売新聞」。

 カメラ映像の時刻が正確かどうかをNTTの時刻案内で確認しなかった捜査員の落ち度は言うまでもないことで,むしろ,私が興味を抱いたのは,有力な物的証拠であったはずの録画映像の時刻表示が8分も狂っているのを,なぜ当該GSが放置していたのかと言うことである。電子機器の時刻は少しずつ誤差が生じてくるが,8分も狂うには相当時間がかかるはずだ。録画映像の定期的なチェックなどをしていなかったのではないか。こうなると,盗難カードでの給油履歴を記録していたPOSの時刻も疑わざるを得ない。

 よく,「ウチの時計は5分進んで(または遅れて)いるから」と事も無げに言い,いつまでたっても正しい時刻に合わせようとしない人がいるが,特段几帳面でもない私でも,そのような性格は理解できない。時刻とは正確であって初めてその価値なり意味なりを持つのではあるまいか。何種類もの電子機器によって運営されているセルフGSでは,常日頃からシステムチェックを行ない,正確・安全を確保することが大切なことなのだということを,今回の冤罪事件で改めて思い知らされた。ニュースを見た翌日,早速自分の店のすべての電子機器の時刻設定をチェックしたことは言うまでもない。

コラム一覧へ戻る

ページトップへ