和田 信治
GS業界・セルフシステム
2013-07-29
先日,何年振りかで会った知人とした会話─。
「和田さん,相変らずセルフスタンドのお仕事してるんですか?」
「うん,まあね」
「景気はどうです?」
「いや~,昨今はセルフにするよりも店仕舞いしちゃうところが多くてね…。そう言えば,あんた○□市に住んでるんだったね。1年半ぐらい前に,○□市のGSの跡継ぎ息子の専務さんがセルフ改造の相談に来たんだけれど,親父(社長)さんが“セルフなんか絶対にダメだ”ってどうしても許してくれないんだって。せめて,ウチにプランニングだけでもしてもらおうとしてGSの平面図を持ち出そうとしたら,親父さんに見つかって“お前,何企んでるんだ”って。まあ,辛抱強く話し合いを重ねて説得するしかないねって話してたんだけれど,結局,半年ぐらい前に廃業して,店舗ごと同業者に売却しちゃってね…」
「あ,それもしかして△▽石油のことじゃあないですか?」」
「そう△▽石油!」
「ボク,そこでずっとガソリン入れてたんですよ…確かにあそこの親父さん,頑固そうな人だったもんな…残念でしたね」
「うん。親父さんから見れば,息子のやることは危なったかしくて見てられなかったのかもね。これは,専務から聞いた話なんだけれど,親父さんは,むかし自分の店の担当者だった旧知の元売り幹部に,息子がセルフにしたがっていることを相談したんだって。そうしたら,その元売幹部の人から,「和田みたいな人間とは関わらないほうが良い」みたいなことを“アドバイス”されたらしいよ」
「へぇ~,和田さんって有名人なんですね」
「ハハハ,元売の偉い人から名指しで嫌われるなんて光栄なことだよね。△▽石油の専務とは連絡が取れなくなっちゃたんだけれど,いまどうしてるのかな~」
「ガソリンスタンド経営って大変なんですね」
「まあ,どんな商売でも大変なんだろうけど,GS業界はこれからますます厳しくなりそうだよ」─。
これまで幾度となく書いてきたとおり,セルフはGS経営における一種の革命であり,時に会社を二分するような事になりかねない。いまの会話のように,親子げんかに発展するケースも幾度となく見てきた。親父がセルフにしたがっているのに,息子が“理想のフルサービス”を主張して譲らないというケースもあったが,大抵は,親父さんが“抵抗勢力”として立ちはだかるパターンだ。さしずめ私などは,素直で従順だった息子をたぶらかしたサギ師のように見られていたのだろう。
しかし,どれほど嫌われようとも,自説を曲げるつもりはない。すなわち,淘汰の時代を迎えた日本のGS業界で生き残るためには,セルフ化によるローコスト経営しか道はない。全国の“頑固親父”のみなさんには,かち割り氷で頭を冷やして考えてもらいたい。
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