セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.472『ローコストヒッター』

エンタメ・スポーツ

2013-08-26

 “またかよ”と思われるかもしれないが,やっぱり今回はイチローのことについて書かざるを得まい。今月23日,日米通算安打数が遂に4千本を超え,26日現在,さらに3本のヒットを上積みしている。次の目標とされる,メジャー通算3千本まであと275本だ。今年40歳になるイチローだが,恐らくこれからも我々を感嘆させる記録を次々にクリアしてゆくことだろう。その恐るべき打撃技術の秘訣は何か─。

 親しいGS経営者の方がメールで教えてくださったのだが,24日の日経新聞朝刊で,イチローに関する著書もある児玉光雄というスポーツ心理学者が,『イチローにはそぎ落としの美学がある』と解説している。児玉氏曰く「成長しようとするとき,普通の人は何かを付け加えようとするが,イチローの思考は全く逆で無駄を省こうとする」のだ。たとえばイチローは細身のバットを使用しているが,「常識的に考えれば,ミートするだけなら太いタイプのバットの方が楽。だが,イチローはきちんと芯に当てるバッティングをするために,あえて細いバットを使っている」(児玉氏)─。

 この記事を私に教えてくれたGS経営者が何を言いたかったかは,もはやお分かりだろう。そう,私たちが追求しているローコスト・セルフシステムは,まさにこのイチロー的思考と合致するものなのだ。「成長するために無駄を省く」ことこそ,弱小のセルフスタンドが,パワーで勝るメジャーリーガー級の大型GSと競い合い,生き残ってゆくための秘訣なのだ。

 例えば, 顧客の囲い込みと客単価の向上に効果的であるとして,どの元売もクレジット会員の獲得に血道を上げている。しかし,昨今のガソリン価格の高騰で手数料負担がじわじわとのしかかってきている。また,仕入代金の支払いが原則先払いの外資系GSでは,クレジット給油量が増えれば増えるほど,仕入代金の支払いと売上決済とのタイムラグによって,資金繰りに苦労することにもなる。クレジット会員って,本当にセルフが「成長するために必要」なものだろうか?

 油外収益は無いよりあった方が良いのかもしれない。しかし,設備投資や在庫管理のコストに見合うだけの利益を生み出しているかどうか冷静に分析する必要がある。“夏の洗車祭り”と銘打って,販促ツールに金を遣い,スタッフにインセンティブを出すなどして記録的な売上をあげたとしても,その後の成績に反映されなければ意味が無い。むしろ,それによって会社の体力を消耗させるようなことになれば,禁止薬物に手を出したA・ロッドのように選手生命を縮めることになりかねない。

 結局のところ,どこまで行っても価格競争から脱することのできないGS業界では,一時的な成果よりも,イチローのように,周囲の雑音に耳を貸さず,ムダを削ぎ落とすことを日々考えながらガソリンを販売し続けることが最も大切なことだと思う。自分の会社が成長してゆくために必要ない,あるいは阻害要因とさえなり得ると判断したのであれば,永年掲げてきた元売マークであっても,「削ぎ落とす」べきだろう。

 5千本安打の可能性についてイチローは,「ゼロではないと思う」と答えている。あえて先発出場が保障されていないヤンキースに移籍したが,「毎日同じことを繰り返すことで安定した状態に持ってゆく技術はある」ときっぱり。無駄を削ぎ落とした肉体と精神で何歳まで,何本まで安打を打ち続けられるのか。“ローコストヒッター”イチローの今後にますます注目したい。

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