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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.474『東京五輪』

エンタメ・スポーツ

2013-09-09

 「オリンピックで最も重要なことは,勝つことではなく,参加することである。大切なのは,征服することではなく,立派に闘うことである」─。ピエール・ド・クーベルタン男爵がオリンピックの復興を提唱した際に掲げた高潔な理想はいまや幻想になってしまっている。スポーツ競技によって,道徳的資質が向上し,適切な判断力が養われ,健全な振る舞いが身につくと信じていたクーベルタンが,いまのカネとクスリにまみれたオリンピックを目の当たりにしたら愕然とすることだろう。

 さて,そのオリンピックが7年後に日本で開催されることになった。ロビィ活動にどれだけのカネをつぎ込んだのか,IOC委員にどんな“おもてなし”をしたのか,という“子どもたちの夢”をぶち壊すような話は脇に置くとして,安倍首相が最終プレゼンで「福島の放射能汚染水は原発湾内で完全にブロックされている」と見得を切ったのを見ていて,“そんなこと約束してホントに大丈夫なのかなぁ”と思ったのは私だけではないだろう。まあ,図らずも原発問題の解決を“国際公約”してしまったわけだから,東京五輪に向けて,今度こそ真剣に取り組んでもらえれば,それはそれで良いのだが…。

 東京五輪が今後の日本経済にどれほどの好影響をもたらすかはいまのところ未知数だ。何せ50年前は,自動車や冷蔵庫やカラーテレビを所有することが庶民の夢だった時代だ。いま“何か欲しいものがあるか”と問われても,これといった物が思い浮かばないし,逆に今回のことで消費税率アップは決定的とも言われている中で,庶民の財布のひもがそう簡単に緩むとは思えない。連日日本中が喜びに沸いているような報道がなされているが,どうしてそんなに嬉しいのか愛知県の片田舎のGS経営者にはさっぱり分らない。

 50年前はモータリゼーション真っ盛りだったが,いまや軽自動車やハイブリッド車がリッター30キロ台の争いで凌ぎを削っている時代。今後,いわゆる「成長戦略」のもとで,省エネ化,脱石油に向けた技術革新はますます加速するだろう。7年後に,我が「セルフスタンド日進東」も含め,日本に何軒のGSが残っていることか…。

 “暗い話ばっかりしてないで,素直に喜んだらどうだ”と言われそうなので,一つだけ明るい話題を。それは,私がこよなく愛する野球というスポーツが五輪正式種目に入らなかったこと。「一試合7イニングまで」とか「2アウトでチェンジ」なんて,とんでもないルール改定がなさたらどうしようと心配していたので心底ほっとした。“ルール破り”の輩が跋扈するGS業界で暮らしていると,せめて好きな野球ぐらいは不変の法則を貫いてほしいと思う。ちなみに,今年,例の“飛ぶボール”のおかげでバレンティンに破られようとしている年間最多本塁打記録55本を王貞治が打ったのは,前回東京五輪が行なわれた1964年だった。

 古代ギリシャで発祥したオリンポス競技会は,徒競争や走り幅跳び,槍投げ,レスリングなど十種目にも満たないものだった。また,競技者は男性に限られ,競技は全裸(!)で行なわれたという。かえって動きにくかったのではないかとも思うが,いずれにせよシンプルなスタイルで行なわれていた。今日の,騒々しいお祭り騒ぎ,あからさまなナショナリズム,貪欲な商業主義とは無縁のものだった。スポーツも商売も原点に立ち返ってシンプルに競い合うことが大切だと思うが,とりあえず7年後どころか7日後のことすらどうなるかわからない私にとっては,オリンピックは本当にどうでもいいことなのだ。

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