セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.477『平等?』

社会・国際

2013-09-30

 半年ほど前の話だが,麻生財務大臣がある会合で医療保険制度について言及し,「食いたいだけ食って,飲みたいだけ飲んで,糖尿病になって病院に入っているやつの医療費を俺たちが払っている。公平ではない。無性に腹が立つ」と述べたことがあった。「生まれつき体が弱いとか,けがをしたとかは別の話」とはしたものの,物議をかもした。ほかにも,延命治療について「死にてぇ時に死なせてもらわなきゃあ困る」とか,憲法改正について「ナチスをお手本にしたらいい」とか,べらんめぇ口調で“本音”をしゃべり,いまや安倍政権の“アキレス腱”と危惧されている。

 しかし,冒頭の「食いたいだけ食って…」の発言は,いささか乱暴ではあるが,“世界に冠たる”わが国の国民皆保険制度の問題点を明らかにしているとも言える。日本では当たり前のこの制度もアメリカでは普通ではない。ギャロップ社の最新調査では,オバマ政権が推し進めようとしている医療保険改革に反対している人は米国民の46%,賛成が49%でほぼ拮抗している。つまりアメリカ人の約半数は「国民皆保険はいらない」と思っているのだ。国民の6人にひとりが無保険者という米国において,その多くはマイノリティを中心とした低所得者だが,「どうして我々の税金で彼らの医療費を払わなくてはいけないのか。そのために国の財政が逼迫したらどうするのか」という富裕・中間層の思いが深層にあるのだ。利己主義という疫病が世界に蔓延し,「“平等”という名の不平等」という言葉が正当化されつつあることに戦慄を覚える。

 GS業界においても,石油元売の同じ油槽所から,4円とも7円とも言われる価格差があるガソリンが市場に流れている“不平等”を是正すべきとの系列GS経営者の訴えが公取を動かし,最大手JXは,いわゆるブランド料を4円から3円に調整したらしい。しかし,その一方で,会社規模やGS販売量に応じて支給されていたインセンティブが減額されたようだ。米国流に考えれば,「どうして我々がたくさん売って元売にもたらした利益で弱小GSを養ってやらなければいけないのか」ということになるのではないか。

 そもそも,平等を求めて業転品との価格差縮小を求めていたはずが,いつの間にか系列店にも業転品を買わせろという主張に変わってしまったことがおかしい。そうであれば,全量業転品を仕入れているPBスタンドに課せられている別の不平等,年間18万円の品質分析量も是正すべきだろう。また,元売が系列店に業転購入を認めることになれば,業転を買う店と買わない店とで新たな格差を設けることになるだろう。例えば,電器業界では,「数量格差」と「支払条件格差」というものが存在しており,これは公取によって容認されている。そりゃあそうだ。たくさん買ってくれるうえ,現金で支払ってくれる客と,少ないうえにつけ払いの客のどちらがありがたいか,子どもでも分かる話だ。GS業界にも,ようやくフツーの商取引のルールが導入されることになるだろう。すなわち,全量購入するか否かによって価格差をつけるのは「正当」なことであり,原則現金先払いの業転品を買えるのであれば,系列玉も同条件で払えと要求することも「正当」なことだと,元売は堂々と主張することになったというわけ。ひとつの格差をなくそうとすれば,別の格差が生まれる─それが世の中というものだ。

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