セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.487『業界二大事件』

GS業界・セルフシステム

2013-12-09

 今年はGS業界の行く末に大きな影響を及ぼす出来事が,少なくとも二つあった。ひとつは2月から,改正消防法が厳格化されたこと。これによって,日本国内のGSの“寿命”は40年と明確に定められた。それを過ぎた場合は,数百万円をかけて改修工事を行なわなければならないということで,資金のないGSや,意欲のないGSがとどめを刺されるかたちで閉鎖に追い込まれていった。

 私の店の余命はあと17年。とはいえ土地も建物も借り物だから,タンクの改修費用は所有者が負担する。改修費の3分の2を補助する制度があるいまのうちに,さらには消費税率が上がる4月までに工事をするのが得策ですよと大家さんに水を向けたが,「和田さんがさらに40年借りてくれるのなら」という返事に「ムムム…」と考えこんでしまった。40年間はともかく,17年後にGS業界がどうなっているやら見当もつかない。その時まで私が生きていて会社が存続してれば,68歳の老経営者か…。とりあえず,寿命が十年を切るぐらいになったらまた相談しましょうや,ということになっている。

 もうひとつの“事件”は,7月に公正取引委員会が,石油元売にたいして系列店が他社製品(業転玉)を一定量購入することを認めてやるよう要請したこと。“吼えない番犬”にいきなり吼えられた石油元売はこぞって商標権の侵害だと抵抗し,割高な「ブランドガソリン」を買わされてきた系列GS店主は“正義は我にあり”とばかりに不公平な価格政策を是正するよう元売に求めている。「改めないなら業転買うゾ!」と─。

 一方,気勢を上げるGS経営者を冷ややかに見つめながら“ごちゃごちゃ言ってないでさっさと買えばいいじゃねぇか”とつぶやいている独立系GS経営者たちも少なくない。私もそのひとりだ。これから,ウチのような小さなPBスタンドにも,仕入先の商社の担当者や業転屋の社長さんが恒例の“年末のご挨拶”にやって来る。私は恐縮しつつ,「○□さんがどんなにいい人でも高ければ買わないし,どんなにいやな人でも安ければ買いますから,毎週見積書を送っていただければそれで結構ですよ」とお願いしている。とてもドライでクリーンな関係であり,どなたも皆一生懸命“勉強”してくださっている。今年も年間を通じて元売の標準的な仕入価格より5,6円は安く仕入れることができたと思う。

 仮に元売が系列店に「業転を買いたければどうぞご自由に」と開き直ったらどうなるか。購入量に応じたドラスチックな差別が“公正な取引”のもとに行なわれることになるだろう。ブランド料が撤廃される代わりに,これまで元売から無償または廉価で提供されてきた様々な支援はすべて料金化されるかもしれない。「業転を現金先払いで買うことができるんだったら,ウチの仕入れ代金も同様に願います」と要求されることも有り得る。来年の賀詞交歓会は会費制になったりして。

結 局,この二つの出来事によって,GS業界は淘汰が一段と加速されたと言える。カネのないGSは延命はおろか,あすの営業活動すらできなくなる。キャッシュフローの重要性がますます高まっているのだ。ゆえに,系列・PBを問わず,いつ終わるとも知れぬ安売り競争をやめなければいけないのだが…。

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