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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.488『叔父さん』

オピニオン

2013-12-16

 北朝鮮の張正沢・国防委員会副委員長が突如解任,反逆者として処刑された。張氏は金正恩・第一書記の叔母の夫,つまり義理の叔父で,若き指導者の“後見人”として金正恩体制の実質的なナンバー2と目されていた。専門家は,北朝鮮指導部の権力闘争激化により政権が不安定となることを懸念しているが,今回の出来事が核問題や拉致問題などにどのような影響をもたらすかは不明とのことだ。

 父親の跡を継いだ息子の経験不足を補うため,父親の兄や弟が嫡男を支えるという構図は,古今東西,国家や企業の経営形態によく見られる。例えば,戦国大名のひとり毛利元就は,近隣の実力者,吉川氏に次男を,小早川氏に三男を養子として送り込み“毛利の両川”とよばれる連合体制を構築,中国地方の統治に成功した。有名な“三本の矢”の訓話はここから生まれた。そして,三代目の毛利輝元はお爺さんの言いつけどおり,二人の叔父さんを立て,協力し合うことによって信長-秀吉-家康と支配者が代わる激動の時代にあって見事毛利家を守り抜いたのである。

 また,今年9月に100歳で亡くなったトヨタ自動車の最高顧問・豊田英二氏は,創業者・喜一郎氏のいとこで,5代目社長を14年余り務めた“中興の祖”であり,その後,章一郎,達郎,そして現在の章男氏へと続く嫡男経営者たちの後見役として君臨した“偉大な叔父さん”だった。トヨタ経営陣は,英二氏が亡くなる直前まで,重要な判断を下す際にはトヨタ記念病院の最上階にある病室まで出向いて,助言を仰いでいたという。

 もちろん,叔父さんにもいろいろいて,トップに立つ甥っ子を支え,助ける人ばかりではない。トップを蔑ろにして実権を握ろうとする者もいれば,長老風を吹かせるばかりで足を引っ張る者もいる。また逆に,叔父さんの賢明な助言を退け“シャチョーは俺だ”と暴走する馬鹿殿もいる。実の父親と息子とは異なるビミョーな関係ゆえに,一旦仲たがいすると修復するのはなかなか難しいかもしれない。

 早世した父親の跡を継いだ息子を叔父さんが補佐しているガソリンスタンドというのは結構ある。あるいは,息子が成長するまで,叔父さんが社長を務めるというパターンもある。いずれにせよ,厳しい経営環境を乗り切るためには,両者がコミュニケーションを図り,一枚岩になって経営課題に取り組んでゆかねばならない。例えば,このまま元売系列店として続けてゆくべきか否かといった重大な決定を下さなければならない時,もし甥である社長がそうしたいのであれば,後見役の叔父さんとよく相談しながら事を進めてゆくべきだろう。叔父さんが難色を示したとしても,年長者の意見によく耳を傾け,その上で自分の考えを敬意をこめて述べるべきだ。

 一方,叔父さんの方がセルフ化による合理化を図るべきだと考えたのであれば,若年だからといって決して甥っ子を軽んじてはいけない。セルフ化のための投資額は決して小さなものではなく,その金を払うのは社長である甥っ子だ。それに,GSの将来を担うのは甥っ子であるのだから,将来像について彼の考えをじっくり聞くのは当然と言える。つまりは,お互いが敬意を払い,胸襟を開いて話し合うことが肝要なのであって,それは国家の指導部であれ,大企業の経営陣であれ,小さなGSの社長と専務であれ,基本的には同じではないだろうか。正月に親戚一同が顔を合わせる家もあるだろうが,やはり仲良く過ごすに越したことはない。

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