セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.490『一年の計』

オピニオン

2014-01-06

 『一年の計は元旦にあり』とは,一年の計画は年の初めである元旦に立てるべきであり,広義においては,物事を始めるにあたっては,最初にきちんとした計画を立てるのが大切だということを意味することわざだが,その由来は毛利元就の言によるものらしい。元就の家臣が元日の朝に祝いの膳を食すよう元就を促したところ,元就はその家臣に,なぜ元旦を祝うか尋ねた。答えに窮した家臣に向かって元就はこう答えたという。「世の愚か者どもは,恵方を拝んで,とそを飲み,長寿・子孫繁栄を祝って浮かれているが,元旦はそんな暢気なものではなく,年の初めに一年の事をじっくり考える。それが本当の祝いというものである」─。

 さすが“戦国最高の知将”と賞賛される元就だけに考えることが違う。差し当たりいまの世であれば,バブル再来かと思わせるアベノミクス効果でいささか浮かれ気味の幕開けとなった2014年だが,そんな世間に流されず,気持ちを引き締めてことし一年間をいかに乗り切るか沈思黙考せよということであろう。実際,ガソリンスタンド業界を取り巻く環境は,エコカー増加による需要の減退,円安による価格の高止まり,4月からの消費税率引き上げによる価格競争の激化など,ちょっと先のことを考えただけで,とても能天気に「おめでとうございます~」などと言っておられる状況ではない。

 さて,私の一年の計はといえば,これはもう毎年同じことなのであるが“打って出ない”ことである。再び毛利元就の話になるが,安芸地方の一領主に過ぎなかった元就は,その知略を駆使して,毛利家を中国地方を支配する大国へとのし上げ,天下を窺うまでになるが,その後,「我が毛利家は,版図の保全のみを願い,天下を望むなかれ」と,後継者である孫の輝元に言い渡す。「我が家はいま10ヶ国ある。一度の危機で半分になっても5ヶ国残る。更なる危機で半分になっても2ヶ国残る。それでも生まれ故郷,吉田の荘よりはるかに大きい!」─。

 事実,輝元は最初の信長との対決での危機から,秀吉支配下での忍従を経て,関ヶ原においては西軍の総大将の地位にありながらも自らは不戦を貫き,諸大名たちが家康によって次々と領地を取り上げられるなか,祖父・元就の言葉どおり,長門・周防の2ヶ国となりながらも存続を果たした。偉大な祖父に比べ,「愚将」との評価もある毛利輝元だが,体面にこだわったり,野望に酔いしれることなく“生き残る”ことを最大の経営目標に掲げて,激動の時代を生き延びた。“打って出ない”ことがいかに勇気と思慮がいることか。

 もちろん,打って出ないということは,何もしないこととは違う。さらなる需要の減退,さらなる価格競争に備えて,ローコストオペレーションの維持・強化に励まねばならないことは言うまでもない。相変わらず,各地域で元売の主導による量販を目的とした巨艦セルフスタンドが建造・就航している。かつての帝国海軍同様,時代遅れの“大鑑巨砲主義”がまかり通っているようだが,コスト感覚を失ったそれらの店舗に,否応なく襲いかかる減販の嵐が乗り切れるとはとても思えない。いまこそローコストセルフへの転換を図るべきだ。

 「今年は午年,力強く飛躍する一年にしてまいりましょう!」などという,何の科学的・論理的根拠のない掛け声に踊らされることなく,GS経営者の皆様におかれましては,冷静に「一年の計」を立てることが肝要であると存じ奉りまする。

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