セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.491『誇り』

セルフ雑記帳

2014-01-13

 『化学メーカーなどが,石油化学業界という用語は実態とズレ始めているとして,新しい名称を公募している。プラスチックや合成繊維,合成ゴムなどの化学製品はこれまで,大半が石油から精製されるナフサを原料に作られてきた。ただ,近年はシェールガスのほか,石炭や藻類などからも化学製品が生産されるようになっている。石油化学という言葉を使い続けると,衰退産業のように見られかねないという危機感から,新しい化学産業の名前を掲げてイメージアップを狙う。募集する名前は20文字以内。2月末まで一般公募し,4月に決定する』─1月5日付「読売新聞」

 ずいぶん前の話だが,ガソリンスタンドのマネージャーの奥さんが,マンションの隣人から“ご主人は何をしていらっしゃるの”と尋ねられ,“ガソリンスタンド”と言うのが恥ずかしくて,「はい,石油関連の仕事に…」と答えているという話を聞いたことがある。同じ業界人として何とも情けない思いだった。セルフスタンドがまだない時代,GSは接客・販売・作業などひとりで何役もの仕事をこなさなければならないハイレベルな職場だった。まして店を預かるマネージャーともなれば,だれもができる仕事ではない。もっと誇りを持ってほしい…そう感じた。

 ところが,いまは「石油」というワードさえダサイと思われる時代になってしまったようだ。しかし,どんな職業であろうと(殺し屋とか詐欺師のような職業は別だが),自分を卑下する必要などまったくない。ドブさらいは決して格好いい仕事には見えないかもしれないが,だれかがドブをさらってくれるからこそ,我々は安心して上下水道を使うことができるのだ。ましてや,我々は需要減退期を迎えたとはいえ,依然として地域の交通・輸送手段としてのクルマ社会を支える無くてはならない存在であり,胸を張って「私の職場はGSです」と言うべきだと思う。

 然は然りながら,やはりGSを男子一生の(女子も)職場にしようと考える若者が少ないのも事実である。こんなGS業界に誰がした?と問われたなら,私はGS業界自らの責任だと答えるだろう。誇りは誇りでも,他店より安く売ることを“誇り”としているような経営者のもとでは,従業員が将来設計を行なえるだけの生活給を得ることは難しいだろう。これから石油の需要は下降する一方だというのに,元売の100㌫販社は,市況を安定させることは断じて許さんとばかりに,価格攻勢を仕掛けてくる。おかげで,いつまで経っても我々の暮らしは良くならない。アベノミクス景気からも完全に取り残された格好だ。

 そんなこんなで,近年,かつてのGS業イコール接客業というこだわりを捨て,誇らしげに掲げていた元売マークも取っ払い,ただただローコストPBセルフとしてガソリンを販売することに徹っして生き残りを図る私のような輩が増えてきた。そもそも「サービスステーション」なんて名称,どこのどいつが付けたか知らないが,ダサ過ぎて一向に定着しない。「ガソスタ」と呼んでもらって結構だ。「セルスタ」でもいい。「石油」に誇りが持てないような業界が,シャレオツなネーミングにしたところでどう変わるものでもない。しかし,決して誇りを捨てたわけではない。むしろ,相変わらずアウトサイダー呼ばわりされている我々PBセルフこそが,実はGS業界の今後進むべき道を切り開く先駆者なのだという気概を持っている。

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