セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.496『SONY再編』

政治・経済

2014-02-17

 東燃ゼネラル石油は先ごろ2013年12月期の決算を発表した。営業利益は523億円だが,そのうち在庫評価益が470億円を占め,調整後営業利益は222億円,そのうち石油によるものは17億円に過ぎなかった。あとの儲けは石化部門によるものだという。ガソリンの販売不振とマージン悪化が如実に表われた決算結果といえる。

 「週刊ダイヤモンド」2014年2月22日号には「待ったなしの石油再編第二幕」と銘打った特集記事が。巨大化するJX・出光連合に対し,コスモ・東燃ゼネ・昭和シェルの3社は速やかに再編を進めるべきだと論じ,「国は遅々として進まない業界再編にプレッシャーをかけるかのように“高度化法第2弾”の策定に入った。再編はもはや既定路線であり,決断が遅くなるほど,ジリ貧となる」だろうと結ばれている。

 「再編」とは,新たに編成することであり,企業におけるそれは効率的な運営を目指して組織や事業を編成しなおすことなのだが,それは“血を流す”ことを避けては成し得ない。今月6日のソニーが「バイオ」ブランドで展開してきたパソコン事業を投資ファンドに売却し,完全撤退するとの発表は,そのことを改めて思い知らされる出来事だった。

 ソニーは,今年3月期で3期連続となる1100億円もの赤字となる見通しだが,300億円の赤字に沈むパソコン事業はその主犯格とされていた。とはいえ,「バイオ」はソニーの看板商品の一つだっただけに,今回の売却は驚きをもって報じられた。かつてソニーの精鋭部隊ともてはやされたパソコン事業の人員1100人のうち,新会社に移ることができるのは250人程度を見られており,残りの従業員は新たな職探しを余儀なくされる。まさに栄華盛衰,これが「再編」というものなのだ。

 企業が存続し続けるためには,時に会社の看板を外すほどの大きな再編を講じなければならない時代が来た。石油業界においても,最近,三井物産が三井石油を東燃ゼネに249億円で売却したことが話題になったが,今後は元売会社の中からも,国内の自動車用燃料市場に見切りをつけて完全撤退し,石化製品や新素材・新エネルギーに事業をシフトする会社が現れても不思議ではない。

 会社をリストラされるのも地獄だが,グローバル化の進む企業で働き続けるのも地獄と言えるかもしれない。資本主義社会では,資本のリターンを高めるには,良い商品を安い価格で提供して消費者を満足させるしかない。そのために,企業はこれまで以上にハードな仕事を課し,従業員を使い捨ててゆくことだろう。当然,石油業界においては非効率な系列店もその対象になるだろう。グローバル化の波は,片田舎のガソリンスタンドにも時間差を置いて必ず襲い掛かってくるのだ。

 グローバル化の波を跳ね返すほどの強力な資本力があるならともかく,やはり生き延びるには,素早く安全な場所へ避難できるよう日ごろから備えておくことが肝要だ。そのためには,何と言っても生活を簡素にし,身軽にしておくことに尽きる。たくさんの家財をリヤカーに載せて逃げようとすれば,津波に呑み込まれてしまう。どれほど大切なものでも命より価値があるものなどない。同様に企業も,生き延びるためには後ろを振り返らず,必要最小限の荷物だけを持って走り続けなければならない。ソニーは「バイオ」を捨てて走り出した。果たして“高台”に到達できるだろうか。

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