セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.498『ビットコイン』

政治・経済

2014-03-03

 そのうちえらいことが起こるだろうと確信していたが案外早く起きたな,というのがニュースを見た直後の感想だった。例の「ビットコイン」の騒動のことだ。インターネット上のみに存在する仮想通貨ビットコイン。低い手数料でネット通販の決済や国際送金に使うことができるため利用者が急増していたが,これが投機の対象となってからは,2011年に1ビットコイン=数セントだったものが,13年12月には一時同1100ドル強の高値に暴騰するというバブル現象を引き起こし,ついこのあいだまで,猫も杓子もスマホ片手にビットコインを手に入れようと狂奔していた。そんな矢先,世界最大級のビットコイン取引仲介会社「マウントゴックス」が経営破綻,85万ビットコイン(約470億円相当)がなくなってしまったことでビットコインの相場も急落,電脳社会はいまや恐慌の危機にすらあるのだという。

 ビットコインとは性質は異にするものの,GSにおいても仮想通貨としていわゆる「ポイント」が流通している。ただしこれはお客様からお預かりしたものではなく,あくまでお買い上げいただいた金額に応じてサービスとして付加するものではある。しかし,それが貯まることでお客様が固定化されている以上,お客様からお預かりしている財産としてきちんと管理されていなければならない。ポイント管理会社がサイバー攻撃などを受けてポイントの一部または全部を消失してしまったら,ポイントサービスの信頼性はたちまち崩壊してしまう。

 また,このコラムで何度も叩かせていただいたが,セルフGSにおいて,お客様が精算機に投入した金額分すべてを給油せず,百円程度をポイントカードに書き込んで返金し,次回来店時に使用させるようにする“人質”ならぬ“ポイント質”を取るシステムは,ポイントに対する概念そのものが間違っていると言わざるを得ない。繰り返すが,ポイントというのはあくまで付加的なサービスである。お客様のお金を無断で換算するなんてけしからん。“目には目を,歯には歯を,現金には現金を”だ。どうしてもポイント化して返すというのなら,5倍か10倍ぐらいにして返すなら許す。

 プリペイドカードの分野に関して言うならば,近年電子化が進んでおり,JR「スイカ」のようにICカードにチャージされるものが主流になりつつあるが,私はNTT「テレカ」のような磁気カードによる決済システムを推奨する。なぜなら,ICプリカはホストコンピューターにトラブルが生じた場合,返金しようにも金額がわからない。磁気プリカなら,最悪の場合でもカードリーダーで残金を調べて返金することが可能だ。とりわけ大震災以降,商品が提供できない不測の事態を常に念頭に置いておかなければならない。結局のところ,お客様も我々もいざという時に一番信用できるのは現金なのだ。

 しかし,その現金もまた絶対的なものではない。そもそも,貨幣というものは国家・中央銀行による信用を前提として物品を購入することのできる代用物に過ぎず,ひとたびその信用性が失われれば,それ自体はただの紙切れまたは金属片でしかない。雪山で遭難して命の危険が迫ったとき,札束の詰まったリュックを背負っていたなら,その時もっとも賢明な“お金”の使い道は何か。それを燃やして暖を取ることだ!所詮貨幣とはそんなものなのだ。ましてや,物理的に運搬や保管することすらできない電子通貨なんて,焚き火にくべることすらできない。経済活動と称する我々の毎日の営みというものは,そんな実態のないものを追い求めていることなのかと思うと切なくもあり,滑稽でもある

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