セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.511『クーポン値引き』

政治・経済

2014-06-09

 デフレ経済下における「勝ち組」の代表格,「日本マクドナルド」の昨年12月期の決算が前期比53.5㌫の減益となり,これまでの成長路線は大きな曲がり角を迎えている。経済アナリストや経営コンサルタントが,マクドナルドの不振の原因や今後の課題などを,ネット上でこれでもかというほど書き立てている。快進撃を続けていた頃は,“マックの強さの秘密はこれだ”みたいなことを書いて持ち上げ高と思えば,陰りが出てくると“それみたことか”としたり顔して分析する─世間とは残酷なものである。

 GS業界も,マクドナルドを羨望のまなざしで見つめていた時期がある。その抜群の集客力にあやかろうと,タイアップしてクーポン券を発券した元売もあった。また,GS管理職向けの勉強会にマックのマネージャーを講師として招き,接客サービスや店舗クレンリネスなどのノウハウを学ぶということもあった。だが,マクドナルドからGSが学び取ろうとした最大のノウハウは,その価格戦略だったのではないか。「100円マック」に代表される徹底的な薄利多売戦術によって急速に成長していったマックの姿に,元売販社や有力特約店は自らの姿を重ね合わせ,『量販イコール成長』という幻想を抱いたのだと思う。

 ただし,マクドナルドはあくまで外食産業であり,今後,魅力的な商品を提供することができれば,再び業績を回復させることができる。事実,サラ・カサノバ新社長は,価格より質を重視した新メニューを矢継ぎ早に投入する一方で,不採算店舗の閉鎖や営業時間の短縮などを断行して,今期は“減収増益”を目指すとしている。個人的には,いまのところ,喰ってみてぇと思えるような商品はないが,果たして「マック復活」はなるか─。

 一方,GS業界は“新商品”を開発することはできないので,どこまで行っても価格競争を続けるしかないないのだが,それでも,いまのマックを反面教師として学ぶべきことがある。それはクーポン戦術だ。スマホやケータイを利用するマックのクーポン会員は何と3500万人。日本人の4人に1人がマックの会員ということになる。これほどまでにクーポンが流布されると,もはやクーポンなしでは,つまり値引きせずには商売ができないような価格構造になっているといえる。この慣習を断ち切ることができるかどうかがマック再生のポイントだと断言する有識者もいるほどだ。

 GS業界も,大抵の場合,店の一番高いところに掲げている価格はいわば“定価”で,そこから「現金会員3円引き,値引きクーポンでさらに2円引き,メール会員はさらに2円引き」といった価格体系が定着しつつある。私のGSは,表示価格イコール提供価格なのだが,ごくたまに,レシートを見てから「価格が引いてないじゃないか」と文句を言ってくる客がいる。GSでは看板の価格から値引きされるのが当たり前だと思っているのだ。

 愛知県日進市においては一週間ほど前に,市内のほとんどのGSの店頭価格が10円近く上がる市況是正が行なわれたが,いまでは値上げ前の価格に戻っている。御多分に洩れず日進市のGSも,会員やクーポンで三重,四重の価格体系を組んでおり,値上げした当日から“抜け駆け安売り”がはじまるので,何十回,市況是正を試みても徒労に終わるというわけ。恐らく,みなさんの地域も大方そんな状況ではあるまいか。マクドナルドも,GS業界も,クーポン値引きを定着させた結果,“定価”で商品を売れないという副作用に悩まされていると言わざるを得ない。

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