和田 信治
GS業界・セルフシステム
2014-06-23
「ケネディクス」という東証一部上場の独立系不動産投資ファンドが,今月19日,連結子会社が保有するガソリンスタンド19ヶ所を売却し,2014年12月期の連結営業利益に6億円を計上する見通しだと発表した。これに好感した投資家が買い注文を入れ,発表翌日の同社の株価は一時前日比7㌫超となり,その後も6㌫超の高い水準で推移しているのだそうだ。
「ケネディクス」なんて会社,それまで聞いたことがなかったし,国内のどことどこのGSを所有していたのかも知らなかった。土地だけでなく,GSという業態ごと“商品”として売却し,しかも6億円もの利ザヤを稼いだというのが興味深い。買い手については,先方の要請により非開示となっているとのこと。譲渡実行予定日は,今年の10月31日。
全国各地でGSの閉鎖が続いているが,今回のような投資ファンドによる買収・転売を経てリスタート,というカタチが活発に行われるようになれば,生きながらえるGSもあるだろう。そもそもGSを解体して更地にするのは容易なことではない。分厚いコンクリートの壁や床を破壊し,地下タンクを撤去した上で,土壌洗浄も行わねばならない。大層な費用がかかるうえ,GS跡地だということでケチをつけられ,売り値を下げざるを得ないことも多々あるという。それならば,その店舗を顧客もろとも居抜きで同業他社に買い取ってもらえないか検討してみるのもよろしかろう。
以前,コンビニの開発部の方に聞いた話では,GSが立っている場所は,往々にして立地条件に恵まれており,まだその店舗が営業している段階から目をつけているのだという。あるコンビニチェーンの開発部にはGS跡地を専属で担当するスタッフがいて,閉鎖しそうなGSの情報を集めて“転換”を促しにゆくらしい。さながら,死にかけた獲物の傍らに舞い降りるハゲタカのようだ。
コンビニとGSでは,立地要件の異なる面もあるだろうが,総じて我々の業界は“良い場所”で商売しているということがうかがえる。現在,我々は消費増税による販売量の落ち込みに加え,原油の高止まりというダブルパンチを喰らっているが,ロードサイドビジネスとしてのポテンシャルは高く,まだまだ捨てたものじゃあないのだ。へこたれてはいけない。
ところで,冒頭の話のように,GSをそのままそっくり譲り渡すという例はまだまだ少ないようだ。その理由についてある元売の方は『例えば休止中のウチの店舗を他の元売やPBに売却して,もしそのGSが以前の何倍も売れるようになっちゃったら,ウチの面子が立たない。おまけに安売りでもされたら,周辺のウチの特約店さんからブーイングを受けるのは必至。だからカネがかかってもスクラップするしかないんだよ』─。
まあ,気持ちはわからないでもないが,そんな器量の狭いことを言っていないで,せっかく作ったGSを何とか活用させればいいのにとも思う。とはいえ,元売自身が『閉鎖するぐらいだったら,少々赤字出してもいいから売りまくれ』と開き直り,100㌫販社に“特攻営業”させるのは感心しない。それは,そのGSの寿命を幾らか伸ばすことになっても,もっと多くの自社系列GSを死へ追いやることになるのだから─。
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