セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.514『土用の丑の日』

オピニオン

2014-06-30

 江戸時代の蘭学者・平賀源内は,知り合いの鰻屋から経営不振を打開する方法はないかと相談を受け,当時もっとも客足が衰える夏場に,「本日丑の日」と書いて店先に貼ることを勧めた。すると店は大繁盛,以後,土用の丑の日,つまり7月下旬から8月上旬にかけての時期に,暑い夏を乗り切るためのスタミナ料理として,鰻を食べる習慣が定着していったと言われている。こうして,「土用の丑の日」は,発案者の源内も予想だにしなかった,歴史的な“キャッチコピー”となったのである。

 ところで,私の地元名古屋市は,東京や京都などと比べて,観光名所もほとんどない都市だが,いつごろからか「なごやめし」と呼ばれるものが全国的に知られるようになった。そのひとつに「ひつまぶし」というものがある。お櫃の中に短冊状に切った蒲焼が敷き詰められていて,これを茶碗によそって食べる。一杯目はそのまま食べ,二杯目はお茶付けにして…といった具合に食べるのだが,これがなかなかウマイ。

 ところが,東海地方の老舗の鰻屋の女将さんに言わせると『あんなものは本来“まかない飯”だがね。うちはずっとやらなんだけど,よそ(県外)から来たお客さんが“ひつまぶし,ひつまぶし”って言うもんだで,仕方なしにやっとるんだわぁ』と言っていた。何となく,フルサービスを頑なに続けてきたGSが,時代や環境の変化に抗えず,セルフに切り替えるのと似てるなと思った。

 今年はじめ,ウナギの養殖に使う稚魚のシラスウナギが昨年とは打って変わって豊漁で,昨年 1㌔当たり300万円前後だったものが,80万円前後と約3割の水準まで低下していると報じられ喜んだのもつかの間,6月には国際自然保護連合が,絶滅の恐れがある野生動物を指定する「レッドリスト」にニホンウナギを加えたことから,将来的には,ワシントン条約でウナギの取引を規制されてしまうかもしれないと業界関係者は不安を募らせている。

 一方,ウクライナに続きイラク情勢も緊迫化し,原油価格はまさに“うなぎのぼり”の様相を呈している。ただし,鰻を食べなくても人間は生きてゆけるが,多くの人にとってガソリンは生活のためになくてはならないものだ。鰻のように“高級品”を気取るわけにも行かない。とりわけ5月以降,業転ガソリンの価格は,一週間に何度も改定される神経質な相場が続いている。我々ができる社会貢献は,できる限り安い玉を仕入れ,必要なマージンを確保しつつも販管コストを切り詰め,お客様に1円でも安くガソリンを提供することではないか。

 無論,採算を度外視した安売りには反対だが,一方で,安い価格看板を掲げるGSの繁盛振りを妬んでか,『所詮,安い看板に引き寄せられるのは,油外収益の見込めないクズ客だ』などと蔑む馬鹿がいる。GSの本分を忘れているとしか思えない。景気が上向いてきたとはいえ,庶民の暮らしはいまも大変だ。ガソリンのような,どこで買っても同じものはできるだけ安いところで買い,家計をやりくりしながら土用の丑の日(今年は7月29日)には,せめて家族で「ひつまぶし」でも食べに行こうかと考える庶民を支援するという,一種の使命感のようなものがなくてはならないと思う。もし,よそのGSでは決して真似のできない“超絶スゴ技”的なサービスが提供できるというのなら,日本橋あたりの高級鰻料理屋のような商売をなさってもよろしかろう。

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