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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.515『味噌』

オピニオン

2014-07-07

 1582年6月,織田信長の命を受け,中国攻めの総司令官として備中高松城の戦いにあった羽柴秀吉は,主君が本能寺の変によって横死したとの知らせを受ける。秀吉は,速やかに敵方・毛利と講和を結び,直ちに軍勢を率いて仇敵・明智光秀を討つため京へと向かった。約200㌔の行程をわずか10日で踏破した秀吉は,山崎の戦いにおいて明智軍を撃破,天下取りに向けて大きく前進することになった。この日本史上屈指の大強行軍は,「中国大返し」と呼ばれる。それにしても,2万以上の軍勢がそれほどの高速移動をどのように成し遂げることができたのか。とりわけ,兵士たちのスタミナをどうやって支えたのか。

 「赤味噌」がその原動力だったとの説がある。尾張・中村の出身だった秀吉は,いまでは「八丁味噌」として知られる,大豆と塩だけで作る味噌を日常食としていた。赤味噌は麹を使わないため,発酵に3年ほどかかるが,他の味噌に比べて,ストレス軽減に働くトリプトファン,脳の機能を活性化させるレシチン,疲労回復や免疫機能強化につながるアルギニンなどの栄養が豊富に含まれているのだという。秀吉軍の兵士は,笹の葉でくるまれた赤味噌を携帯食料としながら,道中の集落で握り飯などの補給を得つつ進軍することで驚異的なスピードで京へ行くことができたというのだ。恐るべし“赤味噌パワー”。

 前回のコラムで「ひつまぶし」を取り上げたが,“なごやめし”といえば,やはり赤味噌を使った料理だろう。愛知県人は,豚カツにも焼き鳥にもおでんにも冷奴にも赤味噌をかけて食べる。いわば,愛知県人のソウルフードだ。しかし赤味噌を使った料理の中でももっとも親しまれているのは,「味噌煮込みうどん」だろう。知らない人はいないと思うのだが,一応説明すると,土鍋でグツグツと煮立った赤味噌汁に浸したうどんである。むかし,ある石油元売の会長さんは,この味噌煮込みうどんが食べたくなると名古屋に出張したとか。特に,鶏肉と一緒に煮込み,生卵を落とした「親子煮込み」は最高だがや。もちろん鶏は「名古屋コーチン」でなけないかんて。

 ところで,名古屋で味噌煮込みうどんを食べようとすれば,大抵「山本屋」という店を紹介される。しかし,この「山本屋」,実は二つある。一つは「山本屋本店」,もう一つは「山本屋総本家」。どちらも,名古屋駅前などに十数店舗を展開しているが,まったく別の会社。紛らわしい。で,和田さんはどっちを贔屓にしているの?と尋ねられれば,実はどちらでもない。実は名古屋には,知る人ぞ知るもう一つの「山本屋」が存在する。名古屋市千種区で,チェーン展開することもなく,ファミリーで味を守り続ける「大久手・山本屋」という店がそれである。私は,ここの味噌煮込みうどんがだ~い好き。人に教えたいような教えたくないような…。とにかく,名古屋にお越しの際はご賞味あれ。(http://www.a-yamamotoya.co.jp/)

 味噌煮込みうどんと違って,ガソリンは日本全国どこで買っても同じもの。我々独立系GSが仕入れているガソリンも元売が輸入・精製した油だ。PBに卸される価格が自分たちへのそれより安いことにいまだ文句を唱えている系列GS経営者がいるが,自分たちの仕入れ価格には元売の“のれん代”が含まれていることが判っていないようだ。その優位性をもっと自覚してもらったうえで,「エネオス本店」とか「コスモ石油総本家」と名乗ればいいではないか。いずれにせよ,これからガソリンの需要はますます縮小してゆくわけだから,系列か独立系かにかかわらず,いかに仕入れコストや人件費を抑えるかがGS経営の“味噌”である。

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