セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.518『違いの分かる男』

政治・経済

2014-07-28

 『ネスレ日本は23日,全日本コーヒー公正取引協議会をはじめとするコーヒー関連の複数の業界団体を退会すると発表した。ネスレはインスタントコーヒーという呼び方をやめて「レギュラーソリュブルコーヒー」に変更したが,この名称の使用が同協議会で認められなかったのが理由と説明している。ネスレは,同社の商品は独自技術でコーヒーのいれたての香りと味わいを実現したもので,インスタントコーヒーに該当しない新ジャンルの製品だと主張している』─7月24日付「毎日新聞」朝刊。

 “ソリュブル”とは,英語(soluble)で「溶ける」を意味する。つまり,従来のインスタントコーヒーと同様,カップに粉末を入れ,お湯を注げば“ハイ出来上がり”なのだが,異なるのはその製法。抽出したコーヒー液を粉末に乾燥させたものが「インスタント」なのだが,「ソリュブル」は,細かく轢いたコーヒー豆に,コーヒー液をコーティングさせたもので,飲み終わったあとカップの底に豆カスが残る。つまり,よりドリップコーヒーに近いものとなっているというわけ。

 試しに私も,「インスタント」と表記された「ネスカフェ・ゴールドブレンド」と,「ソリュブル」と表記された同じ銘柄のものを,私の見えないところで家内にいれてもらい,別々のカップで飲み比べてみた。『ピンクのカップのほうが…ソリュブル…かな?』『そう,アタリ』と家内。『香りをかいだだけですぐわかるじゃん』とせせら笑う中三の息子。かろうじて“違いの分かる男”であることを証明したものの,正直,そんなに驚くほどの違いを感じることはなかった。

 ガソリンスタンドで売っているガソリンは,どこも同じ原料,同じ製法のものだ。ごくたまに,「エッソのガソリンは加速が違う」なんて,分かったようなことを言う客に出くわすが,そんなことはございません。さらに言えば,ハイオクとレギュラーの違いさえ,分かる人は少ない。以前,某元売の系列GSで,改造工事の際,ハイオクとレギュラーの配管を逆につないでしまうミスがあり,その後10年間(!)ものあいだ誰も気づかず,166㌔ものレギュラーを10円以上も高い「ハイオク」として販売し続けていたという事件があった。消費者に“所詮,レギュラーとハイオクの違いなんてそんなものか”との思いを抱かせてしまったことは,業界にとって計り知れない打撃となった。

 それにしても,「ソリュブル」と表記するのは,消費者を混乱させる不当表示だとしたコーヒー業界団体の見解も“なんだかな~”という感じだ。どんな業界でも,新しい製品や業態が現れるのは当然のことであり,それに伴って業界の規約を変えるのもまた当然のことのように思う。「ソリュブル」という名称を,あたかも“脱法ハーブ”のごとく排斥することもなかろう。実際,業界シェア7割のネスレに“それじゃあ脱退します”と言われて団体は大弱りだそうな。業者あっての団体だと思い知らされたことだろう。

 GS業界団体も,石油元売に属さない業者のうち,伊藤忠や丸紅などの商社系列店には「プライベートブランド」という名称を与えるが,私たちのような独立系には,「むじるし」という一抹のいかがわしさを感じさせる差別用語を用いるなどして,悪者扱いをする風潮がいまもある。しかし,その無印,いま,どんどん増えているんですけどね。いぜれにせよ,コーヒーと違って,お客様はどれがPBで,どれが無印かなんてぜんぜん気にしていない。そもそも,自分が給油しているGSが元売系列店かPBスタンドなのかさえ気にしていない客が圧倒的多数だろう。だって,同じものを売っているんだから。

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