セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.520『矛と盾』

GS業界・セルフシステム

2014-08-11

 愛知県は,セルフスタンドの軒数が全国一なのだが,それと比例して自動販売機が荒らされる件数も全国トップクラスなのだという。

 『愛知県警によると,県内の自販機荒らしの発生件数は2012年まで4年連続全国ワーストで,昨年は5位。今年上半期(1~6月)では635件が発生し,被害総額は約1498万円と,半年間ですでに昨年1年間の額(約1300万円)を上回っている。主な要因は,自販機に分類されるセルフ式のGSやコインパーキングの精算機をバールなどで壊し,中の現金を盗むケースが増えているためだ。県内でGSの精算機を狙った被害は昨年は2件だったが,今年は半年間だけで約10倍に急増している』─8月8日付「読売新聞」。

 そういえば,今年のはじめごろ,日進市内のセルフGSが立て続けに精算機が荒らされたとのことで,お巡りさんがよく巡回していた。私の店も何か対策を講じたほうがよいと思い,外接機 (プリペイダー)に市販の防犯装置を取り付けて,外接機のドアを開けるとアラームが鳴るように細工した。

 幸い,いまのところその装置が作動するような事は起きていないが,そもそも,私の店は販売室の中にある自販機でプリペイドカードを買い,それを外接機に投入して給油するというシステムのため,外接機の中には,一般のセルフスタンドのそれのように,何十万円もの売上金やつり銭が入っていることはない。現金を直接投入して給油する機能も備わってはいるが,千円札と硬貨による小額給油に限定されているので,仮に外接機が被害を被ったとしても売上げの数㌫で済むようになっている。

 このシステムは開業当時からのもので,当時はセルフスタンドの主流は,給油を終えた客がセールスルームで精算するという「後払い方式」だった。外接機などの設備投資が軽くて済むうえ,レジカウンターにおける支払い時に,車検や洗車などを勧めることができるとして,「先払い」のプリカ方式よりも優位であると元売りなどが散々喧伝していたが,いま「後払い」システムはほとんど見られない。

 一方,“一万円札を入れて,百円分給油する客”にも対応できるようにと,銀行のATMのような外接機を各アイランドに備えているセルフスタンドもある。私の店の外接機とは比べものにならないぐらい頑丈なケースの中に,売上金やつり銭が詰まっているのだが,それがより安心な外接機といえるだろうか。

 前述の新聞記事によれば,最近,新たな手口として,釣り銭の返却口に火をつけ,現金を盗む手口が頻発しており,自販機メーカーでつくる日本自販機工業会は,「火をつけるなんて予想もしなかった。対策にはきりがない」と頭を抱えているとのことだ。GSでそんなことされたら…と思うとぞっとする。つまり,堅牢な構造にすればするほど賊の手口は荒っぽくなってゆく恐れがあるのだから,あまりむきにならずに,襲われることを前提として,被害を最小限に抑えるシステムにしたほうがセキュリティコストの観点からも懸命ではないかと思うのだ。

 むかし,中国の楚の国で矛と盾を売っていた商人が,「この矛はどんな硬い盾をも突き通すことができ,この盾はどんな矛でも突き通すことができない」と誇ったところ,「ではお前の矛でお前の盾を突いたらどうなるのか」と訊ねられて答えられなかったという「韓非子」の故事から,「矛盾」という言葉が生まれた。今後,ますます人的にも物質的にも安全対策のコストがかさんでゆくにもかかわらず,そのシステムでガソリンを安売りする─これまた「矛盾」の世界である

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