セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.523『異常気象』

社会・国際

2014-09-01

 先月20日未明に発生した広島市の土砂災害は,近年の自然災害がいかに“想定外”の破壊力を持っているかを改めてわたしたちに思い知らせるものとなった。やれ,行政の避難勧告の発令が遅かっただの,現地の地質が水分を吸収しにくい「まさ土」だっただの,危険性を軽視して無理な宅地開発を進めたことが災いしただのと,識者や報道がいろいろなことを言っているが,あとから何を言っても手遅れだし,わずか1時間のうちに100㍉を優に越える雨が降り注ぐなどとだれが予測できただろう。泥流の犠牲となった72名の人々(8月30日現在)とご遺族は,ただただ気の毒だったとしか言いようがない。

 折も折,先月30日と31日の二夜連続で,NHK特集「巨大災害~MEGA DISASTER」を観た。世界各地でこれまで経験したことのない異常気象が起こり,凄まじい破壊力をもたらす台風やハリケーン,サイクロンが発生している有力な原因として,海洋の深層部の水温が上昇していることが指摘されていた。上昇を続けていた海水の表面温度は,この10年間それほど変化がないので,“地球温暖化は小康状態なんじゃないか”なんて思っていたら,とんでもない錯覚だったというわけだ。これまで偏西風の流れや低気圧の発達に一定のブレーキをかけていた海洋深層部の冷たい水が,温暖化のダメージを吸収した結果,十分に働かなくなってしまっているというのだ。

 「地球温暖化」と聞くと,我々石油業界の人間は少なからず心に痛みを感じる。日本のCO2排出量の約2割が運輸部門からの排出で,そのうちの約9割を自動車が占めている。その“排出の元”となる燃料を売って生計を立てているということで,何となく罪悪感に駆られるのは私だけだろうか。原油の高止まりと消費税アップに伴い,省エネ車の普及とエコドライブの浸透に拍車がかかり,昨今の天候不順も手伝って,前月もGS業界は相当厳しい業績となったことだろう。しかし,地球規模で生じている天変地異の事を考えれば,ガソリンが年々売れなくなってゆくことを“人類の一員”としては喜ぶべきなのだ。

 ところが人間という生き物はどこまでも貪欲で,温暖化により北極海の氷が緩んできたことをいいことに,これまで分け入ることのできなかった北極の深部での石油採掘権をめぐって各国が競い合っているというありさまだ。こんなことを続けていれば,それほど遠くない将来,人類はいまだかつて経験したことのない「大患難」によって滅びてしまうだろう,ということは科学者でなくても想像がつく。がしかしその前に,日本のGS業界の壊滅のほうが先に来るだろう。

 先に述べたとおり,長引く減販は個々のGSの努力不足によるものではなく,一種の自然現象であってとどめることはできない。ところがこの現実を受け入れようとせず,元売が発生させる上昇気流によって肥大化した,“台風”のような量販店が安売り量販という大暴風雨を引き起こすものだから,GS業界は,相変わらず甚大な被害を受けている。そこには,販管コストを抑えることで経営の“温暖化”を食い止めつつ,市況環境を一定のバランスに保とうという英知は存在しない。

 今回ご紹介したNHK特集は,今月の20日と21日に後半の2回を放映する予定だが,番組の司会者を務めるのは「司会の神」タモリ。人類がいかに危うい環境に置かれているかが明らかになるにつれ,タモリ氏は深刻な表情をするどころか,むしろ薄笑いを浮かべて「大変ですな,こりゃ」─。もう,行くところまで行かなきゃ人類はわからんだろうな,といった,なかばあきらめにも似た心境を感じたのだが,私もまったく同感だ。

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