セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.528『小売業の行方』

政治・経済

2014-10-06

 『小売最大手,イオンが3日発表した2015年2月期の8月中間連結決算は,最終利益が前年同期比91㌫減の20億円にとどまった。4月の消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動減が長引いたことなどで,主力の総合スーパー事業が低迷した。売上高は15.1㌫増となる3兆4315億円と増収だったが,営業利益は41.2㌫減の433億円だった。ライバルのセブン&アイ・ホールディングスが前日発表した中間最終利益は過去最高の839億円。流通業界2強の頂上決戦で,最終利益の格差はついに40倍以上に広がった』─10月3日付「Sankei Biz」。

 私の住む名古屋市やその周辺都市ではこの数年,大型商業施設「イオンモール」が次々に建設されてきた。つい先日も,最寄のイオン店舗がリニューアルオープンしたのだが,買い物に行ってきた妻に様子を聞いたら“あまり混んでいなかったよ”と言っていた。そんな矢先のこの報道に“そうか,やっぱり儲かっていなかったのか”と納得してしまった。前年同期比9割もの減益というのはショッキングな数字だが,これが何らかの特別損失による結果ではなく,主力の総合スーパーが前年同期110億円の黒字から131億円の赤字に転落して足を引っ張ったというのだからとりわけ深刻といえる。

 イオンの岡田元也社長は,発表会見で,今後は「イオンモール」だけで数百億円規模の投資先送りをするなど,出店計画を大幅に見直す考えを示したとのことだが至極当然といえる。さらなる増税を控えて,大型店舗を次々に作って消費者を囲い込み,そのスケールメリットを活かして薄利多売を仕掛けてゆくとい戦略をこのまま続けてゆけば,かつての「そごう」や「ダイエー」の轍を踏むことになるだろう。石油元売も,相変わらず系列販社が運営する大型店舗で安値量販を行なっているが,果たしていかなる結果となるか。

 また,今回イオンはもうひとつ大きな決断を行なった。連結子会社の「ダイエー」を完全子会社化すると発表したのだ。これまでM&Aによって傘下に収めたスーパーの自主性を尊重してきた戦略を転換し,店舗統廃合を加速させることにしたのである。「2018年ごろには「ダイエー」の屋号は消える」とのことだ。石油元売の100㌫子会社も,その中身は,種々の事情で買収した(せざるを得なかった)各地域の特約店による“混成軍”である。マークこそ統一したものの,統廃合が不十分で,必ずしも効率的な経営がなされているとはいえないとの指摘もある。赤字店舗は潔く閉鎖すべきだ。

 「小売業」という大きなくくりで考えれば,イオンが陥っている問題は,GS業界にも当てはまるものだと思う。一方で,過去最高益をあげたセブン&アイは,同じ流通大手といっても,営業利益の7割をコンビニ事業が稼いでいる。そのセブンも,傘下のスーパー「イトーヨーカ堂」や百貨店「そごう」「西武」は不振だった。セブンの村田社長は,「増税や天候不順で苦戦したが,そもそもこうした環境変化に影響を受けるのは,時代の変化にあっていないということ」と分析している。これまた,GS業界にとって傾聴に値することばだと思う。

 消費再増税についてはイオン・岡田社長は「(小売業という)立場だけを考えれば,(再増税は)ないに越したことはないが,先送りされることもないと感じており,そういうことを期待しても無駄だ」としたうえで,「次の消費税引き上げ時には,価格競争は熾烈になる」との見通しを示した。果たしてイオンは業績を回復させることができるか。セブン&アイは,引き続き好業績を維持することができるか。両社の今後を注視してゆくなら,わたしたちGS業界にとっても様々な教訓が得られるのではないかと思う。

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