セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.529『クレジット決済』

GS業界・セルフシステム

2014-10-13

 『アルバイト先のガソリンスタンドで,客のクレジットカード情報を不正入手したとして,警視庁は割賦販売法違反の疑いで,元GSアルバイトの男ら二人を逮捕した。警視庁によると,二人は,精算時に客から手渡されたカードの番号などを小声で読み上げ,ICレコーダーに録音していたとみられる。昨年9月以降,東京都や神奈川県のスタンド約十店舗で勤務し,約300人から不正入手を繰り返した可能性があるとみて詳しく調べている。また,彼らから伝えられたカード情報を使い,電子マネー「Edy」に不正チャージした後,コンビニでギフト券などを購入し,転売していた疑いがあるとして,電子計算機使用詐欺の疑いで,都内に住む男ら二人も逮捕した。四人とも容疑を否認しているという』─10月9日付「東京新聞夕刊」。

 ひとむかし前に,GSのPOS外接機にスキミング装置を取り付け,クレジットカードの会員番号や口座番号を盗み取るという犯罪が報じられたことがあったが,今回の事件は,カードの表面に記載されている情報だけを使って,電子マネーによる詐欺を行なったという点で,“新手”とも“荒手”ともいえる。ネットショッピングの隆盛と比例して,クレジットカードによる決済も増加しており,それゆえクレジットの登録手続きも簡略化されてきた。今回の事件は,その泣きどころを突いた犯行と言えるが,不正チャージが少なくとも1,900万円にのぼるそうで,電子マネーの仕組みにも問題があるといわざるを得ない。

 しかし,今回の事件がこれほどの被害をもたらした要因は,GSという店舗の持つ特性にあるのではないか。飲食店にせよ,スーパーにせよ,大抵はレジで会計をする際にクレカを渡し,目の前で決済がなされる。ところが,フルサービスのGSでは,給油の前に,客が運転席に乗ったままクレカを店員に渡し,店員はそれを少し離れた(場所によっては,客から見えない)場所にあるPOS外接機,あるいはセールスルーム内のPOS親機で決済する。その隙に,今回のように情報を盗み取られてしまうというわけだ。

 無論,GSの店員の大多数は,そんな悪行を考え付くこともなく真面目に仕事をしているのだが,利用者の側からすれば,クレカを目の届かない場所で扱われることに不安を感じる。客に車から降りてきてもらい,POSの前で実際に決済する様子を見ていてもらうのが最善だが,面倒といえば面倒だ。では,ワイヤレスの携帯端末機で運転席の客の目の前でクレカを通し,ついでに暗証番号も入力してもらえば良いかもしれないが,新たな設備投資が必要となる。

 そもそも,GSでクレジットカードが使えなくてはいけないのか,というのが私の素朴な疑問。ほとんどのGSは,ガソリンなどの商品を現金前払いで購入しているのに,何が悲しくて支払いサイトがあるクレカで買ってもらわなくてはいけないのか。「たかだか二,三千円のガソリン代ぐらい現金で払ってちょうだいよ,その分少し安くしとくからさ」─。

 クレカ導入のメリットを挙げろと言われれば,「新規の集客が見込める」,「顧客の固定化につながる」,「客単価が向上する」といったところだろうが,果たしてどれほどのGSが,手数料を支払ってもなお,こうしたメリットを享受しているといえるのか。とりわけ,元売各社は自社のハウスカードの発券を系列店にやんややんやと督励しているが,全国系列店で利用できるうえ,たまったポイントを提携店で利用できるなど,利用者にはそれなりのメリットはあっても,GS運営会社にとっては,自分の客を元売100㌫販社や大手フリートに“盗み取られている”ように思える,とは言い過ぎか。クレカの最大の利点は,お財布の具合を心配せずに買い物できることなのだから,いっそのこと,元売からの仕入代金の支払いもクレジット決済にしてくれるのならいいんだけれど…。

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