セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.534『原油安の影響』

政治・経済

2014-11-17

 暴落と言っても良いほどの勢いで,原油価格が値下がりしている。米国の原油先物市場は,今月に入り,6月の1バレル107ドルから3割近くも低下して70ドル台に突入,約3年ぶりの安値を付けた。従来なら,こうした局面を迎えると,OPEC加盟国が会合を開き,協調減産するなどして原油価格の値崩れを防ごうとするのだが,今回はいつもと様子が違うようだ。欧州や中国の景気減速で,石油需要が低迷しているにもかかわらず,世界最大の産油国・サウジアラビアが,生産量を絞るどころか引き上げたうえで“安売り攻勢”を仕掛け,価格下落に拍車をかけているのだ。

 専門家は,サウジの変化の理由を「シェールオイル潰し」だと分析している。掘削技術の発達により,これまで採取できなかった地下層の下に眠っている原油(シェールオイル)を掘り出せるようになってから,米国の原油生産量は過去5年で1.5倍に増加,中東の事情を考慮せず増産を続ける米国に,サウジが堪忍袋の尾を切って“宣戦布告”したというのだ。産油国には潤沢な蓄えがあるため,価格戦争になれば米国の方が先に音を上げ,シェールガスを減産せざるを得なくなる,というのがサウジの“読み”らしい。

 要は,「あいつが安売り量販をやめようとしないなら,こっちも安売りで対抗してやる!」という話で,産油国同士のけんかも,日進市のGS同士のけんかも,同じような精神構造でやっているような気がしてならない。元売販社や大手特約店のような“大国”は,資金力にあかせて,安売り量販ができるかもしれないが,周辺の“小国”はたまったもんじゃあない。実際,今回の原油価格の下落により,産油国の財政は急速に悪化すると見られている。例えば,イランの損益分岐点となる原油価格は1バレル136ドルだそうで,このまま原油価格の下落が続けば,財政破綻を引き起こす恐れすらあるという。そのため,イラン議会では,今回の原油安は,イランに経済問題を引き起こすため米国とサウジが結託して仕掛けた陰謀だとの声すら出ているそうだ。

 まあ難しいことは,国際経済の専門家たちが,今後もわかりやすく説明してくれることだろうし,この先,原油価格が上がっても下がっても,一介のGS経営者には,どうすることもできない話だ。「中東情勢と原油価格に関する今後の展望」などという講演を聴きに行く気なんぞ毛頭ございません。いずれにせよ,石油をほぼ100㌫輸入に頼る日本にとって,石油価格が安くなるに越したことはないが,石油元売にとっては,決算時の頼みの綱である「在庫評価額」が大幅に目減りするわけだから,あまり喜ばしいことではないのかもしれない。

 ところで,今回の石油価格の下落で,思わぬ業界が恩恵を被っているというニュースをネットで読んだ。米国のチョコレート最大手「ハーシーズ」のCEOが,今年はシェール革命のおかげで大幅に業績が伸びるとの見解を示した。シェール革命により,国内の原油が潤沢となり,過去4年間で最低のガソリン価格となっている米国では,消費者がガソリンスタンドでちょっとしたスイーツを購入する余裕が生まれているとのことだ。「風が吹けば桶屋が儲かる」の例えではないが,日本でも,この先ガソリンや灯油の価格が下がれば,消費者に多少の心理的な余裕が生まれ,いろいろな物が買われるようになり,結果的に消費が拡大するかもしれない。原油価格が下がってきたこの機会に,暫定税率を取っ払ったうえで,軽減税率の対象品目にするなどして,できる限りガソリンを安くしてみたら,GDPも上がるかも…。

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