セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.538『接客マニュアル』

オピニオン

2014-12-15

 今月5日,ニューヨークから韓国・仁川に向かう大韓航空機のファーストクラスに搭乗していた,同社のオーナーの娘で副社長の趙顕娥(チョ・ヒョナ)氏が,ナッツを袋ごと渡した乗務員に「マニュアルが守られていない」と指摘,責任者を呼んだが,すぐにマニュアルを確認できなかったためブチギレし,飛行機を搭乗口に戻させて責任者を降ろすという騒ぎを起こし,その横暴さに批判が集まっている。同社のマニュアルでは,ナッツは皿に載せて出すよう取り決められていたらしい。

 大韓航空のわがままお嬢の振る舞いはただただ呆れてしまうばかりだが,たかがナッツとはいえ,やはりマニュアル通りのサービスがなされていなかったことはけん責されても仕方のないことだとも思う。これがナッツの出し方ではなく,飛行機の操縦や安全にかかわる事柄であったとすれば,飛行機を引き返させて,再度マニュアル通りに点検・準備をやり直させても文句を言う人は少ないだろう。人命にかかわることなのだから。

 『小に忠なる者は大においても忠なり』という格言があるが,その反対に,小さなことをきちんと守り行なえない者が,いくら「やるときはやります」と言っても,それは信用されないだろう。マニュアルに明文化されていることは,何人であれそれに固く従うべきである。そのようにしてはじめて,安全性・快適性・均一性などが保たれるのである。

 セルフスタンドにおいて私がモットーとしているのは,すべてのお客様に平等のサービスを提供するということ。いまでこそほとんどいなくなったが,セルフスタンドがまだ珍しかったころは,“給油してくれ”“窓を拭いてくれ”などと要求してくる客がいた。断ると“よそに行くよ”と言われても“どうぞ”と答えて,決して妥協しなかった。

 時には“このあいだお店にいた方は給油してくれたわよ”などと言われたこともある。そういう場合は,以前にその“親切な”行ないをしたスタッフに,それがセルフサービスの“純度”を脅かす独善的な行為であることを諄々と説き,二度としないように厳命する。それが納得できないのなら,辞めてもらってもかまわない。大袈裟に言えば『一つの妥協が無限の妥協につながる』のだ。

 すべてのお客様に最高のおもてなしをしたいという願いをこめて接客マニュアルは策定される。しかし,ナッツの出し方まで習熟し,いつでも完璧に実行できるように人間は出来ていない。「ヒューマンエラー」という言葉がある様に,人間はミスをする不完全な生きものなのだ。それゆえ私は,接客ミスによってお客様が不快な気分になる機会を極力少なくするために,セルフ化の道を選択したのだ。

 一方,接客を重視するのであれば,ミスが生じることを前提とし,それをカバーしたうえで,顧客固定化のために活用するぐらいの工夫も必要だろう。少し前のこと,我が家で宅配ピザ「ピザーラ」を注文した。しかし,配達員がサイドメニューのグラタンを忘れてきたことが分かり,あとから届けに来たうえで,500円の割引券をくれた。数週間後,再び「ピザーラ」に電話注文する際,その割引券を使用しようとクーポン番号を伝えたところ,「先日は大変失礼いたしました」との応対を受けた。恐らく,伝えたクーポン番号に“お詫び券”であることを認識できる数字が含まれていて,改めてお詫びするようマニュアルで定められていたのだと思う。その一言で気を良くした私は,SサイズをMサイズにしてしまった。

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