セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.544『航空業界とGS業界』

GS業界・セルフシステム

2015-02-02

 格安運賃を売りにしてきた航空会社・スカイマークは,先月28日に東京地裁に民事再生法の適用を申請し,受理された。1998年7月に事業免許を取得して運航を開始した同社は,それまで大手の独占状態で割高感があった航空運賃に対し,安さを武器に顧客を獲得,国内航空会社第3位となるまで急成長した。しかし,大手航空会社も値下げして対抗するなど価格競争にさらされ,いつしか赤字に転落。さらに格安航空会社(LCC)の相次ぐ参入により,利用客減が加速してしまったという。

 “そらみろ,安売りなんかするものだからこの有様だ。GS業界でも安売り量販店は早晩スカイマークの轍を踏むことになるだろう”という声が聞こえてきそうだが,スカイマーク破綻の致命傷となったのは,単に価格競争によるものではなく,別にあった。民事再生法の適用を申請した翌日,就任後初の会見に臨んだ有森正和社長は,報道陣から「A380の導入計画が破綻の理由になったのか」と問われた際,「それで結構だ」と認めざるを得なかった。

 「A380」とは,欧州エアバス社の世界最大の旅客機で,2011年にスカイマークは6機総額1,915億円で購入契約を結んだ。当時,スカイマークの業績は絶好調だったとはいえ,年間売上のほぼ倍にあたる巨額の投資だった。その後の業績悪化で代金の支払いが滞り,エアバス社から購入契約解除の通告に加え,7億ドル((約830億円)の違約金を求められ,スカイマークの経営は追い詰められていった。スカイマークの負債総額は約710億円だが,違約金はこれに含められていないため,負債総額はさらに膨らむ可能性がある。

 最新鋭の超大型機を導入して国際線に殴りこみをかけ,日本航空,全日空の“二強”に一気に肩を並べる─。スカイマークのこの野望が潰えたことこそ,今日,GS業界が他山の石とすべきものだと思う。つまり,分を超えて手を広げ過ぎることだ。機内サービスの簡素化や地上業務のアウトーソーシング化を進め,CAのスカートまでミニにして(?),徹底的なコストカットで格安運賃を実現し,航空業界に新境地を拓いたスカイマークだが,いつしか,高コスト路線へと“航路”を変更してしまった。GS業界においても,沢山売ろうとするあまり,大型化・重装備化を図り,価格競争に耐えられない状態に陥ってしまうGSは少なくない。今後,ガソリンの販売量は下降してゆくというのに,まだ拡販・量販にこだわり,大掛かりな投資をしようとするのは,あまりにも無謀だと言わざるを得ない。他社より高く売ってもなお量販できるというのなら話は別だが…。

 国内のほかのLCCに目を転じると,ジェットスター・ジャパンは2014年6月期決算で売上高が290億円と,昨季に比べ倍増したものの,107億円もの営業赤字を出し,こちらも経営状況は厳しい。その主たる原因は,整備士不足で関西空港の第二拠点化に手間取り,余剰機材を抱え込んでしまったことだそうだ。人手不足のために店舗機能のポテンシャルを引き出せない大型セルフGSと似ている。

 一方,2014年3月期決算で,国内LCCでは初の単年度黒字(10億円)を達成したのは,ピーチアビエーション。使い勝手の悪い成田空港に進出せず,はじめから関空を拠点としたことにより, 定時出発率83%,就航率99%と,いずれも国内航空会社でトップの数字を達成したことが業績好調の要因らしい。井上慎一CEOは,「安さを実現するために,ほかの便に振り替えをしないとか,5分でも遅れたら搭乗できないといったルールを設けて“LCCとはこういうものなのだ”とお客様に理解していただく一方で,決められた時間に飛行機をちゃんと飛ばすということにこだわった」とインタヴューで答えているが,ガソリンや灯油を低価格で安定して販売してゆくための秘訣と相通ずるものがあると感じた。航空業界での動きを見ていると,GS業界で生き残るためのヒントが得られるようだ。

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